断食(ファスティング)はテストステロンを上げる?論文で検証【2026年最新】
- 断食そのものでは男性ホルモンは上がらない。下がった報告もある。
- ラマダンの研究では性欲と性交の回数が減った。勃起の点数は変わらず。
- 体重が多い人だけ、痩せたぶんの上乗せが期待できる。
- 血流側を狙うならシトルリンなど、1日あたりのmgで選ぶ。
「断食で男性ホルモンがドバッと出る」。バイオハック界隈で人気の説です。ところが論文を並べると、話はむしろ逆に見えます。この記事では男のコンディションを4つの軸に分けます。①勃起 ②性欲・性生活 ③活力 ④射精・生殖です。それぞれ、何を測った研究があるのかを並べます。
断食でテストステロンは上がる?

上がるという確かな証拠はありません。むしろ下がったという報告のほうが残っています。まず、いちばん誤解されている点から見ていきます。
筋トレ習慣のある男性34人を8週間追った試験があります 確度 中。16:8の時間制限食(1日のうち8時間の間だけ食べる方法)を続けた群では、総テストステロンとIGF-1(体の成長に関わるホルモン)が有意(偶然では説明しにくい差)に低下しました(Moro 2016)。体脂肪は減り、筋力と筋肉量は保たれています。ただしホルモンの数値は上がっていません。
もっと短い断食でも同じ方向です。健康な男性10人を調べた試験があります 確度 低〜中(小規模)。一晩の絶食のあと、さらに48時間食べない条件で比べました。テストステロンは8.7から5.7 µg/Lへ、LH(脳から精巣への指令ホルモン)は6.9から5.0 U/Lへ下がりました(Röjdmark 1987)。
同じ研究には続きがあります。別の9人には、56時間の断食中にブドウ糖を少しずつ与えました。この人たちではテストステロンもLHも下がりませんでした。つまり引き金は「食べない」こと自体ではありません。血糖が落ちて、体が飢餓と判断することのほうです。
下がった2本は、どちらも血糖が落ちる条件だった。
糖を足した群では下がっていない。何時間食べないかを、先に決めておく。
まとめた解析ではどうなる?
大きくまとめても結論は変わりません。ラマダン(断食月)の研究35本・1,107人をまとめた解析があります 確度 高(メタ分析)。断食月の前後で、テストステロンに意味のある変化は認められませんでした(Poursalehian 2024)。
| 研究 | 対象と期間 | テストステロンの結果 |
|---|---|---|
| Moro 2016 | 筋トレ男性34人・8週間・16:8 | 総テストステロンが低下 |
| Röjdmark 1987 | 健康な男性10人・48時間の絶食 | 8.7→5.7 µg/L に低下 |
| Röjdmark 1987(糖あり) | 別の9人・56時間+ブドウ糖 | 低下しなかった |
| Poursalehian 2024 | 35研究・1,107人のまとめ | 変化は認められず |
断食でホルモンが湧く、という証拠は見つかっていない。
下がった試験は、どれも血糖が落ちる条件だった。何時間食べないかを先に決める。
効いているのは断食?それとも減量?

効いているのは減量のほうです。太っている人が体脂肪を落とせた場合には、テストステロンが戻る余地があります。ただし、それは断食という形式の手柄ではありません。
肥満と低テストステロンは、輪のようにつながっています。内臓脂肪が多いと、テストステロンが女性ホルモンに変わる量が増えます。変換を担うのはアロマターゼという酵素です。脂肪組織に多く含まれます。体重が減れば、この変換も減る方向に動きます(内臓脂肪とテストステロン参照)。
だから断食の価値は「上げる」ことではありません。「減らす手段の一つ」です。しかも減量の手段は断食だけではありません。食事の組み立てや筋トレでも同じ場所に届きます。続けられる方法を選ぶほうが現実的です。
上がるとすれば、痩せたぶん。断食という形式そのものではない。
体重が標準の人には、この上乗せは残っていない。自分の体格で判断を分ける。
勃起コンディションはどうなる?

勃起の点数は変わらなかった、という報告があります。ただし調べた研究は少なく、期間も1か月です。強い結論を出せる材料ではありません。
ラマダン中の男性45人を調べた研究があります 確度 低〜中(小規模)。平均年齢は37±7.2歳でした。IIEF(勃起の状態を点数にする質問票)のうち、勃起機能の項目は断食前と差がつきませんでした(P=0.714)。血液中のテストステロンも同じく差なしです(P=0.847)(Talib 2015)。
読み方には注意が必要です。45人は小さな集団です。測ったのは自己申告の点数で、血流そのものではありません。期間も1か月だけです。健康な男性が中心で、もともと勃起に悩んでいた人を集めた研究ではありません。
もう一つ、正直に書いておきます。断食が血流側の指標をどう動かすかを調べた研究は、探しても見当たりませんでした。血管の広がりやすさや、血液中のアルギニン濃度を測った断食の試験です。勃起は血流の話でもあるのに、そこは空白のままです。
| 測ったもの | 結果 | 出典 |
|---|---|---|
| IIEFの勃起機能の項目 | 断食前と差なし(P=0.714) | Talib 2015 |
| 血液中のテストステロン | 差なし(P=0.847) | Talib 2015 |
| 血管の広がりやすさ | 断食で調べた研究は見当たらない | — |
1か月の断食で、勃起の自己採点は変わらなかった。
測ったのは質問票で、血流そのものではない。血流側を見るなら、シトルリンなどの1日あたりのmgで比べる。
性欲や性生活はどうなる?

ここは下がったという報告があります。同じ研究で、性交の回数も減りました。45人という小さな研究ですが、4軸のなかでは数字が動いた場所です。
Talib 2015では、断食月の終わりに次の項目が有意に低下しました 確度 低〜中(小規模)。性的欲求の点数、性交の回数、体重、そしてFSH(精子づくりを促す指令ホルモン)です。勃起の点数が動かなかったのと対照的です。
ただし原因を断食だけに帰することはできません。ラマダンの1か月は、食べる時間だけが変わるわけではないからです。就寝が遅くなり、睡眠が細切れになります。日中の活動量も変わります。性欲は、こうした生活の変化に素直に反応します(性欲が落ちる原因参照)。
| 項目 | 断食月の終わりの変化 |
|---|---|
| 性的欲求の点数 | 低下 |
| 性交の回数 | 低下 |
| 体重 | 低下 |
| FSH | 低下 |
| 勃起機能の点数・テストステロン | 変化なし |
性欲と性交の回数は減ったと報告された。勃起の点数は動いていない。
睡眠のずれも重なった1か月だった。極端に絞らず、食べない時間の長さと量を決めて試す。
活力とスタミナはどうか?

日中の眠気と反応の速さは変わらなかった、という報告があります。一方で、眠りの中身は変わっていました。同じ「元気」でも、測る物差しで結論が変わります。
若い男性を対象に、睡眠を実験室で測った研究があります 確度 関連。通常時、断食時、ラマダン中の3条件を比べました。REM睡眠(夢を見ている浅い眠り)の割合は、通常の25.6±4.8%に対し、断食時17.7±8.1%、ラマダン中18.6±10.7%まで下がりました(BaHammam 2013)。
ところが、客観的な眠気の指標と反応速度は3条件で差がつきませんでした。まばたきの長さから眠気を測る方法です。つまり「眠りの質は変わったが、日中のパフォーマンスの測定値は保たれた」という結果になります。
ここで尺度をはっきりさせます。この研究が測ったのは、実験室での反応時間と眠気です。「夕方まで元気が続くか」という日常の体感ではありません。両者は別のものです。日中のスタミナが主題なら、睡眠時間・体重・鉄の状態を先に確認するほうが早いことがあります(睡眠とテストステロン参照)。
眠りの中身は変わったが、眠気と反応の速さには差が出なかった。
測ったのは実験室の反応時間で、夕方の体感ではない。目的に合う尺度を決めて、睡眠時間と1日あたりの量から見直す。
精子と妊活の研究は?

運動率が下がったという報告と、変わらなかったという報告の両方があります。研究の数は多くありません。妊活が目的なら、ここは丁寧に読む価値があります。
不妊治療に通う男性97人の記録を調べた研究があります 確度 関連(過去の記録をさかのぼった調査)。同じ人のラマダン中とラマダン外の精液検査を比べました。前進運動率は38.12±25.13%から30.01±20.46%へ低下しています。精液量も少なくなりました(Engel 2023)。
著者はいくつかの理由を挙げています。断食3週目の終わりに酸化ストレス(体がサビつくような状態)が上がること。そして睡眠が短くなることです。睡眠が6時間を切ると、精子の数と運動率が下がりやすいと知られています。断食だけを取り出した結果ではありません。
逆方向の報告もあります。精子の状態が良くない男性を2群に分けた探索的な試験です 確度 中(小規模なRCT)。断食を模した食事(1日500kcalを5日間)を4か月で3回行いました。運動率・総数・濃度は、待機群と比べてわずかに良い方向でした(Kessler 2025)。ただし人数が少なく、結論を出す段階ではありません。古い報告では、ラマダン断食は男性の生殖能力に悪影響を与えなかったとされています(Ramadan 1986)。
| 研究 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| Engel 2023 | 不妊治療に通う男性97人 | 前進運動率 38.1%→30.0%、精液量も低下 |
| Kessler 2025 | 精子の状態が良くない男性 | 断食を模した食事群でわずかに良い方向 |
| Ramadan 1986 | 健康な男性 | 生殖能力への悪影響は認めず |
ラマダン中の検査で、精子の前進運動率が低かったという報告がある。
逆に少し良い方向の小さな試験もある。妊活が目的なら、まず精液検査で現在地を測ってから決める。
やり過ぎると何が起きる?

エネルギー不足の方向に傾きます。テストステロンが下がった報告は、いずれも食べない時間が長い条件でした。分かれ目は時間の長さです。
Röjdmark 1987を思い出してください。48時間の絶食では下がり、ブドウ糖を足した56時間では下がりませんでした。体が飢餓と判断したかどうかで結果が分かれています。長時間・低栄養に振り切るほど、不利な方向へ動きます。
体格によっても差が出ます。間欠的な断食と生殖ホルモンをまとめた総説では、痩せ型で活動量の多い男性で低下の報告があると整理されています 確度 関連(Cienfuegos 2022)。太っている人と痩せ型の人では、同じ断食でも意味が違います。
| 体格 | 期待できる上乗せ | やり過ぎたときの向き |
|---|---|---|
| 体脂肪が多い | 減量ぶんの余地がある | 筋肉が落ちやすい |
| 標準 | 上乗せの余地は小さい | エネルギー不足に傾く |
| 痩せ型・運動量が多い | ほぼ残っていない | 低下の報告が目立つ |
分かれ目は「体が飢餓と判断するかどうか」。
痩せ型の人はとくに慎重に。持病や服薬がある人は、始める前に医師へ相談する。
血流系の成分と何が違う?

測っている場所が違います。断食の研究が見ているのはホルモン、シトルリンなどが見ているのは血管の側です。勃起の空白は、こちらの物差しで埋めるほうが筋が通ります。
シトルリンは体の中でアルギニンに変わります。アルギニンは一酸化窒素(血管をゆるめて広げる物質)の材料です。健常者20名の試験では、シトルリン3gを2回飲むと血液中のアルギニン濃度が最高149 µmol/Lまで上がりました 確度 中。同じ量を経口アルギニンで摂った場合を上回っています(Schwedhelm 2008)。松樹皮エキスやマカも、この血流・活力のまとまりに入ります。
つまり断食と成分は、比べる土俵が違います。どちらが上という順位はつきません。見るべきは1日あたりのmg表示です。研究で使われた量と製品の配合量を並べれば、自分で比べられます。量を書いていない製品は、その比較の土俵に乗りません。
断食はホルモン側、シトルリンなどは血管側の話。
物差しが違うので順位はつかない。ラベルの1日あたりmgを、研究で使われた量と並べる。
よくある質問(FAQ)
断食するとテストステロンは上がりますか?
上がるという確かな証拠はありません。16:8を8週間続けた試験では、むしろ総テストステロンが下がりました。35研究をまとめた解析でも変化は認められていません。上がるとすれば、太っていた人が減量できた場合の間接的な変化です。
16時間断食(16:8)はどうですか?
筋トレ習慣のある男性34人の試験で、8週間後に総テストステロンとIGF-1が低下しました。体脂肪は減り、筋力と筋肉量は保たれています。体組成を整える手段としては使えますが、ホルモンを押し上げる方法ではありません。
断食は性欲に影響しますか?
ラマダン中の45人の研究では、性的欲求の点数と性交の回数が下がりました。ただし断食だけが理由とは言えません。就寝時刻や睡眠時間も同時に変わる1か月だからです。眠りが戻れば、そこも戻る余地があります。
妊活中でも断食していいですか?
自己判断で始めないでください。ラマダン中の精液検査で前進運動率が低かったという報告があります。逆に少し良い方向の小さな試験もあり、結論は出ていません。まず精液検査で現在地を測り、担当医に相談してください。
痩せ型でも断食したほうがいい?
コンディションの観点では、痩せ型の人が極端な断食をする理由は乏しいです。痩せ型で活動量が多い男性ほど、低下の報告が目立ちます。減らす脂肪が残っていない人には、上乗せの余地も残っていません。
どれくらいなら安全ですか?
明確な安全ラインを示せるデータはありません。手がかりは血糖です。ブドウ糖を足した条件では低下が起きませんでした。極端な長時間と低栄養を避け、タンパク質と睡眠を確保してください。持病や服薬がある人は事前に医師へ。
断食は減量の手段であって、ホルモンを上げる方法ではない。
体重が多い人ほど上乗せの余地がある。痩せ型なら、量と時間を短めに設計する。
まとめ
4軸で分けると、断食の立ち位置がはっきりします。最後に整理します。
- ① 勃起:1か月の断食で質問票の点数は変化なし(Talib 2015)。血流側を測った断食の研究は見当たらない。
- ② 性欲・性生活:同じ研究で性的欲求と性交の回数が低下。睡眠のずれも重なる期間だった。
- ③ 活力:眠りの中身は変わったが、実験室での眠気と反応速度は差なし(BaHammam 2013)。
- ④ 射精・生殖:ラマダン中の精液検査で前進運動率が低下(Engel 2023)。逆方向の小さな試験もある。
- ホルモン:16:8で低下、48時間の絶食でも低下。まとめた解析では変化なし。上がる証拠はない。
- 共通:断食は減量の手段。血流側を狙うなら、1日あたりのmgで成分を選ぶ。
断食で上がるのはホルモンではなく、痩せたぶんの余地。
4軸のうち動いたのは性欲と精子で、どちらも下向きだった。目的を決めて、量と時間から設計する。
参考文献
- Moro T, et al. (2016) “Effects of eight weeks of time-restricted feeding (16/8) on basal metabolism, maximal strength, body composition, inflammation, and cardiovascular risk factors in resistance-trained males.” J Transl Med 14(1):290. PMID: 27737674 — 筋トレ男性34人・8週。総テストステロンとIGF-1が有意に低下、筋力・筋量は維持。
- Röjdmark S. (1987) “Influence of short-term fasting on the pituitary-testicular axis in normal men.” Horm Res 25(3):140-146. PMID: 3106181 — 健康男性10人。48時間の絶食でテストステロン 8.7→5.7 µg/L、LH 6.9→5.0 U/L。ブドウ糖を与えた9人では低下せず。
- Talib RA, et al. (2015) “The Effect of Fasting on Erectile Function and Sexual Desire on Men in the Month of Ramadan.” Urol J 12(2):2099-2102. PMID: 25923156 — 45人・平均37±7.2歳。勃起機能(P=0.714)とテストステロン(P=0.847)は変化なし。性的欲求・性交回数・体重・FSHは有意に低下。
- Engel OJ, et al. (2023) “The Effect of Month-Long Daily Fasting on Semen Parameters: A Retrospective Cohort Study.” Gynecol Obstet Invest 88(6):384-390. PMID: 37883941 — 97人。ラマダン中の前進運動率 30.01±20.46% vs 期間外 38.12±25.13%、精液量も低下。
- BaHammam AS, et al. (2013) “Objective assessment of drowsiness and reaction time during intermittent Ramadan fasting in young men: a case-crossover study.” Behav Brain Funct 9:32. PMID: 23937904 — REM睡眠の割合が 25.6±4.8% から 17.7±8.1%/18.6±10.7% へ低下。眠気の指標と反応速度は3条件で差なし。
- Poursalehian M, et al. (2024) “Impact of Ramadan fasting on serum levels of major endocrinology hormonal and biochemical parameters in healthy non-athlete adults: A systematic review and meta-analyses.” PLOS One 19(5):e0299695. PMID: 38781203 — 35研究・1,107人。テストステロン・LH・FSHに有意な変化なし。
- Cienfuegos S, et al. (2022) “Effect of Intermittent Fasting on Reproductive Hormone Levels in Females and Males: A Review of Human Trials.” Nutrients 14(11):2343. DOI: 10.3390/nu14112343 — 間欠的断食と生殖ホルモンの総説。痩せ型の男性で低下の報告を整理。
- Kessler CS, et al. (2025) “Fasting for male fertility—a mixed methods study.” Front Nutr. PMID: 39885870 — 断食を模した食事(500kcal×5日を4か月で3回)。精液所見はわずかに良い方向、対照群は低下傾向。探索的で小規模。
- (1986) “Effects of Ramadhan fast on male fertility.” PMID: 3090956 — ラマダン断食による男性の生殖能力への悪影響は認めず。
- (2006) “Effect of Ramadan fasting on secretion of sex hormones in healthy single males.” PMID: 16761684 — 断食月における性ホルモンの変化を検討。上昇の一貫した証拠は乏しい。
- (2020) “Effects of Ramadan Intermittent Fasting on Gut Hormones and Body Composition in Males with Obesity.” PMC7432640 — 肥満男性でのラマダン断食と体組成・ホルモンの変化。
- Schwedhelm E, et al. (2008) “Pharmacokinetic and pharmacodynamic properties of oral L-citrulline and L-arginine: impact on nitric oxide metabolism.” Br J Clin Pharmacol 65(1):51-59. PMID: 17662090 — 健常者20名。シトルリン3g×2回で血液中アルギニン濃度が最高149 µmol/L。経口アルギニンを上回る。






