- マカはペルーの高地で育つ根菜。食べ物に近い。
- 血中テストステロンは動かない。複数の試験で確認ずみ。
- 性欲と勃起スコアには改善の報告がある。ただし人数は少ない。
- 見るべきは1日何gを何週間か。量が書いてある設計を選ぶ。
「マカ=テストステロンを上げる精力剤」。ところが研究では、中心にある「ホルモンが上がる」という前提だけが支えを失います。では何も起きないのか。実在論文だけで軸ごとに整理します。
マカって何?

マカはペルーの標高4,000m級で育つアブラナ科の根菜です。薬草というより、現地では長く食べ物でした。乾燥させた根の粉がサプリとして流通しています。確度 参考(Gonzales GF, 2010・PMID: 20090350)
マカへの期待は3つです。①テストステロンを上げる ②性欲を高める ③精子を増やす。一続きに語られがちですが、研究では別々の話です。
男ラボは男の状態を4軸で見ます。①勃起 ②性欲・性生活 ③活力・エネルギー ④射精・生殖。マカは4軸すべてに研究があるめずらしい成分ですが、軸ごとに証拠の厚みはまるで違います。
マカはアンデスの根菜で、薬ではなく食べ物に近い。
期待は3つに整理できるが、研究では別々の話として扱う必要がある。
テストステロンは上がる?

上がりません。マカの研究で最もはっきり決着がついた部分です。複数の試験が同じ方向を向いています。
代表はゴンザレスらの試験です。健康な成人男性が対象でした。マカ摂取で自覚的な性的欲求は改善したと報告されました。ところが血中テストステロンは、プラセボ(見た目は同じで中身が入っていない偽物)と差がありませんでした。エストラジオール(女性ホルモン)も同じです。確度 中(Gonzales GF, 2002・PMID: 12472620)つまり「欲求が動く=ホルモンが動く」ではないのです。
同じグループの別の試験も同じ結論です。血中のテストステロン・LH・FSH・プロラクチンは変化しなかったと報告されています。確度 中(Gonzales GF, 2003・PMID: 12525260)
新しいRCTも同じです。対象は健康な男性20人。1日1.75gを12週間与えた二重盲検(本人にも担当医にも、どちらを飲んだか分からないようにする方法)の試験です。精子の指標は上向きでした。それでもホルモン値は有意(偶然では説明しにくい差)に変わりません。確度 中(Melnikovova I, 2015・PMID: 26421049)
| 確度 | 試験 | 設計 | ホルモンの結果 |
|---|---|---|---|
| 確度 中 | Gonzales 2002 | 健康な成人男性 | テストステロン・E2に差なし。 |
| 確度 中 | Gonzales 2003 | 健康な成人男性 | LH・FSH・PRLも変化なし。 |
| 確度 中 | Melnikovova 2015 | 20人・1.75g・12週 | ホルモンは動かず。 |
ここは選ぶ側に役立ちます。「テストステロンブースター」という売り文句でマカを選ぶ理由は見当たりません。数値そのものを見たいなら、扱う成分も検査も別です。数値と栄養の関係は亜鉛とテストステロン、DHTの誤解はクレアチンとDHTの検証にまとめました。
血液検査の数値は動かない。3つの試験が同じ答えを出している。
ただし「数値が動かない=何も起きない」ではない。物差しを変えると話が変わる。
勃起コンディションはどう?

勃起そのものを物差しにした試験は、数こそ少ないものの実在します。どちらもプラセボと差が出ています。
ひとつめは軽度の勃起障害(ED)をもつ男性50人の試験です。マカ乾燥エキス2,400mgとプラセボに分けて12週間比べました。IIEF-5という勃起機能の質問票は、両群とも上がりました。ただしマカ群の上がり幅が大きかったと報告されています(1.6±1.1 対 0.5±0.6、P<0.001)。確度 中(Zenico T, 2009・PMID: 19260845)
ふたつめは2023年のRCTです。テストステロン値は正常なのに、加齢にともなう不調(LOH)の症状がある男性80人が対象。1日6gを12週間続けた群で、プラセボ群より改善したと報告されています。指標はAMS(加齢男性症状スコア)・IIEF・IPSS(排尿の質問票)です。確度 中(LOH RCT, 2023・PMID: 36593713)
冷静に読む点もあります。性機能をまとめたシステマティックレビューはこう述べます。「効果を示す試験はあるが、試験数もサンプルも小さく、確かな結論には不十分」。確度 高(Shin BC, 2010・PMID: 20691074)
| 確度 | 調べたもの | 何を測ったか | 結果 |
|---|---|---|---|
| 確度 中 | Zenico 2009(50人・2.4g・12週) | IIEF-5スコア | プラセボより上げ幅が大きい。 |
| 確度 中 | LOH RCT 2023(80人・6g・12週) | AMS・IIEF・IPSS | いずれも改善を報告。 |
| 確度 高 | Shin 2010(総括) | 試験の質そのもの | 規模が小さく結論は保留。 |
| — | 硬さの機械測定 | 夜間の勃起の硬さ | 調べた範囲では見当たらない。 |
EDの背景に血管や神経の病気が隠れていることもあります。仕組みは勃起はどう起こるかで解説しました。
測られたのは質問票の勃起スコア。硬さの機械測定ではない。
それでも2つの試験でプラセボと差が出た。どちらも1日2.4〜6gを12週間の設計。だから見るのは1日量のmg表示。
性欲や性生活は変わる?

4軸のなかで報告がいちばん多いのがこの軸です。ホルモン値が動かないまま、欲求のスコアだけが動いています。
前述のゴンザレスらの試験では、8週間で自覚的な性的欲求が改善しました。確度 中(PMID: 12472620)鍛えた自転車選手8人の小さな試験もあります。マカエキスを14日間とった期間は、性的欲求の自己評価がプラセボ期間より高かったと報告されました(P=0.03)。確度 関連(Stone M, 2009・PMID: 19781622)
規模の大きい試験もあります。ペルーの成人175人を赤マカ・黒マカ・プラセボの3群に分けた12週間のRCT。1日量は3gです。性的欲求・気分・エネルギー・生活の質のスコアが、マカ群で大きく改善したと報告されています。確度 中(Gonzales-Arimborgo C, 2016・PMC5039502)
抗うつ薬による性機能の落ち込みを扱った試験もあります。外来患者20人を1日1.5gと3.0gに分けた比較で、3.0g群のほうが改善が大きかったと報告されました。確度 関連(Dording CM, 2008・PMID: 18801111)量が結果に出た例です。
閉経後の女性の研究でも、心理症状と性機能の指標は改善したが、ホルモン含量とは関係していなかったと報告されています。確度 関連(PMID: 18784609)性欲が下がる理由は男性の性欲低下の原因で整理しました。
ホルモンが動かないまま、欲求のスコアだけが動いている。この軸が一番厚い。
ただし規模は小さい。8人、20人という試験もある。数字は人数と1日量をセットで見る。
活力とスタミナはどう?

日常の元気には、プラセボと差が出た試験があります。ただし「競技成績」の話とは分けて読みます。
まず競技側、自転車選手8人の試験です。40kmのタイムトライアルは、飲む前の自分と比べれば速くなりました。ただしプラセボ期間との差は出ていません(P>0.05)。確度 関連(Stone M, 2009・PMID: 19781622)測ったのは鍛えた選手のタイムです。「夕方まで持たない」という日常の体感とは別の物差しです。
その日常側には報告があります。前述のペルー175人の試験では、エネルギーと気分のスコアがプラセボ群より改善と報告されました。1日3gを12週間の設計です。確度 中(PMC5039502)LOHの試験でもAMSスコアが改善しています。確度 中(PMID: 36593713)AMSは倦怠感や意欲の落ち込みを含む質問票です。
40〜50代の疲れは40代・50代の活力と疲労でも扱っています。
競技のタイムでは差が出ていない。測ったのは選手の記録で、日常の疲れやすさではない。
日常の元気を聞いた175人の試験では、差が報告されている。だから活力で選ぶなら、1日何gを何週間かを見る。
精子と妊活はどうなる?

個別のRCTでは良い変化が報告されています。ところが複数をまとめると、確実とまでは言えません。
健康な男性20人に1日1.75gを12週間与えた二重盲検RCTでは、精子濃度と運動率が上向きの傾向を示したと報告されました。確度 中(Melnikovova I, 2015・PMID: 26421049)別のRCTでは1日2gを12週間とった群で精子濃度がプラセボより改善。ただし精液量・運動率・形態には差がありませんでした。確度 中(Alcalde AM, 2020・DOI: 10.1111/and.13755)
一方、複数のRCTを統合したメタ分析はこう結論します。精液の質への効果は一貫せず、精子濃度の有意な増加は示されなかった。確度 高(2022・PMID: 36110519)試験ごとに種類・加工・用量がバラバラだと、こう見えます。
妊活は時間との勝負で、精子の状態は見た目では分かりません。詳しくは精子の質を上げる方法にまとめました。
小さな試験では、精子の数と動きに上向きの変化。統合すると確実とまでは言えない。
妊活は順番が命。まず精液検査で現在地を測り、そのうえで足す量を決める。
なぜ「精力剤」と呼ばれた?

理由は2つあり、どちらも研究の外側です。ひとつは伝統の力。アンデスで古くから強壮に使われた歴史が、「効くはず」という前提のまま現代に持ち込まれました。確度 参考(PMID: 20090350)
もうひとつは「欲求が上がる=ホルモンが上がる」という思い込みです。データはこの2つを切り離しました。近年の総説も、有望さと証拠不足の両方を指摘しています。確度 参考(2024・PMID: 38440178)
イメージを作ったのは伝統と直感で、データではなかった。
切り分ければ話は単純。ホルモンの数値は動かず、欲求と勃起のスコアには報告がある。
安全性で気をつけることは?

安全性は多くの研究で良好です。ただし「穏やかだから何でもいい」とは別の話です。
総説や臨床試験では、重い有害事象が少なく忍容性も良いと報告されています。確度 参考(PMID: 20090350)175人のRCTでも、赤マカ・黒マカとも忍容性は良好でした。確度 中(PMC5039502)
- 治療の代わりにしない:EDや妊活の悩みの裏に、治療できる病気があることがあります。まず受診を。
- 持病・服薬中の人:ホルモン感受性の病気がある方や服薬中の方は、開始前に医師・薬剤師へ相談を。
- 製品差が大きい:産地・加工法・種類(黒・赤・黄)で中身が変わり、研究の数字をそのまま当てはめられません。
- 高地の人の血液データ:黒マカは、高地でヘモグロビンが高すぎる人の値を下げたと報告されています。健診で指摘のある人は医師へ。
同じ植物系の神話検証はノコギリヤシは薄毛・前立腺に効く?もどうぞ。
重い副作用の報告は少なく、忍容性は良いとされる。
ただし製品ごとの中身の差が大きい。種類と1日量が書いてあるかを、まず確認する。
試すなら何を見る?

見るべきは3つだけです。種類・1日量・期間。研究がそこでしか差を出していないからです。
まず1日量。差が出た試験は1日1.75g〜6gでした。抗うつ薬の試験では1.5gより3.0gで改善が大きかったと報告されています。「マカ配合」とだけ書いてあっても何も分かりません。次に期間。上の試験の多くは12週間で、2〜3日で判断した研究はありません。
最後に軸と成分の対応です。困っている軸で担当する成分は変わります。血流の材料として研究されているのはシトルリンやアルギニンで、マカとは働く場所が違います。見るのは「どちらが上か」ではなく、自分の軸の成分が1日何mg入っているかです。違いはシトルリンとアルギニンの違いで整理しました。
| 差が出た試験 | 1日量 | 期間 | 測った物差し |
|---|---|---|---|
| Zenico 2009 | 乾燥エキス2.4g | 12週 | IIEF-5(勃起)。 |
| LOH RCT 2023 | 6g | 12週 | AMS・IIEF・IPSS。 |
| Gonzales-Arimborgo 2016 | エキス3g | 12週 | 性欲・気分・エネルギー。 |
| Melnikovova 2015 | 1.75g | 12週 | 精子濃度・運動率。 |
| Alcalde 2020 | 2g | 12週 | 精子濃度。 |
研究が使った量は1日1.75〜6g、期間はほぼ12週間だった。
だから見るのはラベルの1日量。内訳が書いていない製品は、研究の数字と比べようがない。
よくある質問(FAQ)
質問が集まるのは、いつも「上がるか/効くか」。
答えは物差しごとに違う。だから量と期間を見て、自分の軸に合うかを決める。
まとめ
血中テストステロンは上がりません。3つの試験が同じ答えを出しています。いっぽう性欲のスコアには報告がいちばん多く、勃起スコアも2つのRCTでプラセボより改善と報告されました。活力は主観の指標で差が出て、競技のタイムでは出ていません。精子は個別の試験で改善報告があり、統合すると不一致です。これが2026年時点のフェアな整理です。
マカは「ホルモンを底上げする魔法の根」ではありません。ただしホルモンとは別の経路で、複数の軸に報告がある成分です。種類・1日量・期間がラベルにあるかが、成分を比べる実用的な線引きになります。つらい症状が続くなら、サプリの前に専門医へ。
4軸のうち、報告が厚いのは性欲。次いで勃起スコア。
数値ではなく物差しで選ぶ。ラベルに1日量が書いてあるかどうかが、最初の分かれ道になる。
1. Gonzales GF, et al. Effect of Lepidium meyenii (MACA) on sexual desire and its absent relationship with serum testosterone levels in adult healthy men. Andrologia. 2002. [PMID: 12472620](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12472620/)
2. Gonzales GF, et al. Effect of Lepidium meyenii (Maca) on serum reproductive hormone levels in adult healthy men. J Endocrinol. 2003. [PMID: 12525260](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12525260/)
3. Zenico T, et al. Subjective effects of Maca extract on well-being and sexual performances in patients with mild erectile dysfunction. Andrologia. 2009. [PMID: 19260845](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19260845/)
4. Shin BC, et al. Maca (L. meyenii) for improving sexual function: a systematic review. BMC Complement Altern Med. 2010. [PMID: 20691074](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20691074/)
5. Stone M, et al. A pilot investigation into the effect of maca supplementation on physical activity and sexual desire in sportsmen. J Ethnopharmacol. 2009. [PMID: 19781622](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19781622/)
6. Dording CM, et al. A double-blind, randomized, pilot dose-finding study of maca root for SSRI-induced sexual dysfunction. CNS Neurosci Ther. 2008. [PMID: 18801111](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18801111/)
7. Gonzales-Arimborgo C, et al. Acceptability, Safety, and Efficacy of Extracts of Black or Red Maca in Adult Human Subjects. Pharmaceuticals. 2016. [PMC5039502](https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5039502/)
8. Melnikovova I, et al. Effect of Lepidium meyenii Walp. on Semen Parameters and Serum Hormone Levels in Healthy Adult Men. Evid Based Complement Alternat Med. 2015. [PMID: 26421049](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26421049/)
9. Alcalde AM, et al. Does Lepidium meyenii (Maca) improve seminal quality? Andrologia. 2020. [DOI: 10.1111/and.13755](https://doi.org/10.1111/and.13755)
10. Maca (Lepidium meyenii Walp.) on semen quality parameters: a systematic review and meta-analysis. 2022. [PMID: 36110519](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36110519/)
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12. Gonzales GF. Ethnobiology and Ethnopharmacology of Lepidium meyenii (Maca). Evid Based Complement Alternat Med. 2012. [PMID: 20090350](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20090350/)
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※本記事は一般的な健康情報であり、特定商品の効能・効果を標榜するものではありません。






