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ED(勃起不全)は「心臓の予告状」だった|勃起の科学と、業界が言わない真実【完全版 2026】

2026.07.13 約26分で読めます
ED(勃起不全)は「心臓の予告状」だった|勃起の科学と、業界が言わない真実【完全版 2026】

ED(勃起不全)は「心臓の予告状」だった|勃起の科学と、業界が言わない真実【完全版 2026】

3行でいうと
  • EDは血管のサイン。心臓より細い血管が先に詰まる。
  • 勃起は血管・神経・ホルモン・心理の4つで動く。
  • 「治る」と言い切る商品は避ける。治療は医療機関で。
  • 栄養で見るならシトルリンなど材料の量(mg)を見る。

「最近、勃ちが悪い」。 その感覚は、夜だけの話ではないかもしれません。循環器の医師たちは、EDを血管の早期サインとして本気で扱っています。この記事では、勃起のしくみと、業界が言わない話を、研究の数字とともに整理します。

📋 この記事の要点(先に結論)
🫀

ペニスの動脈は1〜2mm、心臓の動脈は3〜4mm。細い管から先に詰まる。だからEDは心臓病より先に出やすい。
📈

EDのある男性は、将来の心筋梗塞リスクが約1.6倍、総死亡リスクが約1.25倍という大規模解析がある。
⚙️

勃起は血管・神経・ホルモン・心理の4つの歯車で動く。1つ欠けても止まる。
💊

サプリは食品で、EDを治す薬ではありません。ED治療薬は医療用医薬品。まず泌尿器科へ。
この記事は情報提供で、診断・治療に代わるものではありません。気になる症状は医療機関へ。
「根拠レベル」の見方:◎確度が高い(大規模研究・総説)○確度が中(研究)△関連の報告▽参考程度

ペニスは心臓より先に詰まる?

多くの男性で、答えは「はい」です。ペニスの動脈は体のなかでもとくに細く、動脈硬化の影響をいちばん早く受けます。だからEDは、心臓の症状より先に現れることがあります。

動脈硬化は全身の血管で同時に進みます。タバコ、高血糖、高血圧、脂質異常。これらは心臓もペニスも等しく蝕みます。ちがうのは、症状が出る順番です。順番を決めるのは、血管の太さでした。

イタリアの循環器医モントーシらは、これを「動脈サイズ仮説」と呼びました 確度 高(総説)(Montorsi 2005/Gandaglia 2014)。

🩸 血管の「太さ」で、詰まる順番が決まる
血管 直径の目安 意味
ペニスの動脈 1〜2mm いちばん細い。最初に影響が出る。
心臓の冠動脈 3〜4mm 次に症状が出る(狭心症・心筋梗塞)。
頸動脈・大腿動脈 5〜7mm さらに後になる。
同じ量のプラーク(血管にこびりつく汚れ)でも、細い管ほど流れが止まりやすい。だからペニスは体の「炭鉱のカナリア」になります。

実際、心臓の血管の病気を持つ男性の約3分の2で、EDが心臓症状より先に現れていました 確度 中(Montorsi 2005/Gandaglia 2014)。さらに、コホート研究(同じ条件の人たちを長く追いかける調べ方)を集めたメタ分析(いくつもの研究をまとめて一つの結論を出す方法)でも、EDのある男性は将来の心血管イベントが有意(偶然では説明しにくい差)に多いと示されました 確度 高(Vlachopoulos 2013)。

📈 EDがある男性の「将来リスク」(Vlachopoulos 2013)
約1.6倍
心筋梗塞
約1.4倍
脳卒中
約1.25倍
総死亡
前向き研究をまとめた相対リスク。「1.6倍」は集団で見た比率で、あなた個人の運命ではありません。これは脅しではなく、早く気づけるという意味です。

同じ方向の報告は他にもあります。マサチューセッツ男性加齢研究では、心血管の危険因子を持つ男性ほど、後にEDを発症しやすいと示されました 前向き(Feldman 2000)。大規模な追跡研究でも、EDのある男性は将来の冠動脈疾患が多いと報告されています 縦断(Inman 2009)。共通する背景は血管内皮(血管のいちばん内側をおおう膜)の不調で、「EDと心血管疾患は同じ根を持つ」と総説で整理されています 総説(Solomon 2003)。ガイドラインでも、EDのある男性には心血管リスクの評価がすすめられています(Vlachopoulos 2011)。

EDは、体が先に出してくれた血管の知らせ。

恥ずかしさで受診を遅らせるほど、確認のチャンスを逃す。

勃起はどうやって起きる?

勃起は「血管・神経・ホルモン・心理」の4つがそろって、はじめて起きます。どれか1つ欠けても止まります。EDが多因子と言われるのは、このためです。

勃起を動かす「4つの歯車」
① 血管
血液を送る
② 神経
信号を伝える
③ ホルモン
土台を作る
④ 心理
スイッチを入れる
図:勃起は血管・神経・ホルモン・心理の協働で成立する(生理学的な整理)。
  • ① 血管:血液を陰茎に送り、閉じ込める。動脈硬化や糖尿病で傷むと出にくい。
  • ② 神経:脳からの信号を伝える配線。糖尿病の神経障害や骨盤の手術で傷つくことがある。
  • ③ ホルモン:とくにテストステロン。燃料というより、機械が動く土台。
  • ④ 心理:不安やプレッシャーは、強力に歯車を止める。

歯車ごとに、原因を並べるとどうなる?

実際には複数が混ざります。それでも歯車ごとに並べると、頭の整理はぐっと楽になります。

歯車 崩す主な原因
① 血管 動脈硬化・糖尿病・高血圧・脂質異常・喫煙・肥満。つまり生活習慣病そのもの。
② 神経 糖尿病の神経障害・骨盤内の手術(前立腺など)・脊髄の病気。
③ ホルモン テストステロン低下(LOH)・甲状腺の異常など。
④ 心理 不安・ストレス・うつ・関係の悩み・「また失敗するかも」の予期不安。
薬剤 一部の降圧薬や抗うつ薬など。自己判断で中断しない。

とくに糖尿病は手ごわい相手です。血管(①)と神経(②)を同時に傷つけるからです。ホルモン(③)については、大規模研究でEDが性欲低下・朝立ちの減少と並ぶ「性の3症状」の一つとされています 確度 高(Wu 2010)。

4つのうち、どれが弱っているかで打ち手が変わる。

だから「とりあえず何か飲む」より先に、原因の見当をつける。

ED治療薬はなぜ効くの?

PDE5阻害薬は、性的な刺激で出た信号を「長持ちさせる」薬です。だから刺激がまったく無ければ、飲んでも勃ちません。ここが最大の誤解です。

性的な刺激が神経を通って伝わると、陰茎の血管で一酸化窒素(血管をゆるめて広げる物質)が出ます。これが cGMP という物質を増やし、血管の筋肉をゆるめます。血液がどっと流れ込み、勃起が起きます。役目が終わると PDE5 という酵素が cGMP を分解し、勃起は収まります。

ED治療薬は、この PDE5 を止めます。つまり、消えかけた信号を消えにくくする薬です。

📖 用語をやさしく

血管内皮(血管のいちばん内側をおおう膜)… ここからNOが出る。傷むとNOが作れない。
NO(一酸化窒素)… 血管をゆるめて広げる物質。勃起の入り口。
cGMP… NOを受けて血管の筋肉をゆるめる伝令。
PDE5… cGMPを分解する酵素。ED治療薬はここを止める。

よくある誤解 実際
飲めば自動的に勃つ 性的な刺激が前提。刺激ゼロでは反応しない。
催淫剤である 性欲を上げる薬ではない。血流の反応を保つ薬。
NOを増やせば解決 NOは4つの歯車の一部。神経・ホルモン・心理も要る。

薬の種類ごとの違い、絶対に併用してはいけない硝酸薬、日本未承認薬の危険は、ED治療薬(PDE5阻害薬)の種類と選び方で詳しく扱っています。

薬は「反応を保つ」だけで、無から勃起を作らない。

土台の血管そのものは、日々の生活でしか守れない。

EDはどれくらい多い?

40〜70歳の男性の約52%が、何らかの程度のEDを経験していました 確度 高(大規模研究)(Feldman 1994)。2人に1人です。あなただけの問題ではありません。

内訳は軽度17%、中等度25%、完全10%でした。完全なEDは40歳の約5%から、70歳の約15%へ増えていきます。加齢で増えるのは事実です。ただし「年だから仕方ない」で片づけると、①で見た血管のサインを見逃します。

📊 40〜70歳男性のED(Feldman 1994)
約52%
なんらかの程度
17%
軽度
25%
中等度
10%
完全
米国・マサチューセッツ州の40〜70歳男性を対象にした調査。日本人の数字ではない点には注意。

2人に1人が通る道。隠す理由はどこにもない。

珍しくないからこそ、泌尿器科では日常の相談として扱われる。

朝立ちは何を教えてくれる?

朝立ち(夜間勃起)は、心の問題か体の問題かを見分けるヒントになります。眠っている間の勃起は、性的な意思とは無関係に起きるからです。

健康な男性は、一晩に3〜5回ほど勃起しています 確度 中(Schmidt 2004)。REM睡眠のたびに起こる生理現象です。体が毎晩、勝手に血管の点検走行をしているようなものです。

朝立ちの状態 考えられる方向
朝立ちはある(あるのに本番でダメ) 歯車④の心理的な要因の可能性が相対的に高い。
朝立ちも続けて消えた 歯車①〜③の体の要因の可能性。受診で確認を。

夜の点検走行が動いているなら、機械そのものは無事かもしれません。止まっているなら、血管やホルモンを疑う理由になります。くわしくは 朝立ちが減った原因 へ。ただし目安であって、自己診断は禁物です。

朝立ちの有無は、原因の当たりをつける材料になる。

消えた状態が続くなら、体のほうを検査で確かめる。

業界の3つの嘘を斬る

ここからは、他のメディアが書かないパートです。男の悩みにつけ込む売り方を、3つに分けて整理します。

「精力剤で勃起が回復する」は本当?

本当ではありません。少なくとも、そう言い切れる商品は存在しません。サプリは食品で、EDを治す薬ではないからです。

誤解しないでください。栄養や成分の分野に研究が無いわけではありません。実際、血流に関わる成分には積み重ねがあります(後の「勃起の硬さに研究はある?」で扱います)。問題は研究の有無ではなく、その限界を伏せて断言することです。「飲めば治る」「勃起力が上がる」と書いた時点で、それは薬機法の外に出ています。

見分け方はシンプルです。「治る」「上がる」「即効」と言い切る商品を避ける。それだけで地雷のほとんどは踏みません。

怪しいのは成分ではなく、言い切る売り文句のほう。

成分名と1日あたりのmgを開示している商品かどうかで見分ける。

「サプリでペニスが大きくなる」は本当?

本当ではありません。飲んで陰茎そのものが大きくなる、という医学的根拠のあるサプリは存在しません。

「増大」をうたう商品や器具は、コンプレックスにつけ込む商法の典型です。お金と健康を守るために、近づかないのが正解です。

「増大」をうたう商品には、裏づけとなる研究が無い。

サイズの悩みは、まず泌尿器科で相談したほうが早い。

「個人輸入なら安い」は本当?

これは、命に関わる嘘です。ネットで個人輸入されるED治療薬には、偽造品が多いと報告されています。

有効成分がゼロのものから、逆に量が多すぎるもの、不純物が入ったものまであります。しかも一部の心臓の薬(硝酸薬)と併用すると、血圧が急に下がり命に関わります。安さの裏にあるリスクが大きすぎます。

💊 偽造品
成分ゼロ・過剰・不純物混入の報告がある。
❤️ 硝酸薬との併用
血圧が急降下する。絶対に避ける。
🩺 診察がない
心臓の状態を確認せずに飲むことになる。
⚖️ 救済されない
健康被害が出ても公的な救済の対象外。

ED治療薬は医療用医薬品。必ず医療機関で処方を受ける。

数千円の差で、心臓のリスクを買うことになる。

勃起の硬さに研究はある?

あります。軽度のEDのある男性で、L-シトルリンの摂取後に勃起の硬さの指標が改善したという報告があります(Cormio 2011)。ただし規模は小さく、これで「治る」とは言えません。

勃起は、突きつめれば血流の現象です。だから材料の話になります。その中心にあるのが、③で見たNOです。

性的刺激 → NO放出 → 血管拡張 → 海綿体に血液充満 → 勃起
内皮が健康ならNOが十分に作られる
内皮が傷むとNO不足で勃ちにくい

薬は反応を助けます。けれど土台の血管そのものは、日々の生活と栄養でしか守れません。機序

材料になるアミノ酸として研究されてきたのが、L-シトルリンとL-アルギニンです。研究の中身を並べます。

成分 何を・誰に・どうした 結果
L-シトルリン 軽度EDの男性24人、1.5g/日を1か月(Cormio 2011) 勃起硬度スコアの改善を報告。小規模で追試が要る。
L-シトルリン+レスベラトロール PDE5阻害薬を使うED男性でのRCT(くじ引きで2群に分けて比べる試験)(Shirai 2018) 薬に上乗せしたところ、勃起機能の指標が改善したと報告。
シトルリン+アルギニン 健常者にアミノ酸を投与(Morita 2014/Suzuki 2017) 単独より血液中のアルギニンが速く上がる。
松樹皮エキス+アルギニン 健常者・ED男性(Nishioka 2007/Stanislavov 2008) NOに依存した血管拡張や血流指標の改善を報告。

補足すると、松樹皮エキスの研究で指標にされたのが eNOS(血管の内側でNOを作る酵素)です。つまり「材料を足す」だけでなく「作る側の働き」も見られています。

いずれも魔法ではありません。人数が少ない研究も混じります。それでも、血流という土台に向き合った研究の蓄積があるのは事実です。だから製品を見るときは、成分名の並びではなく1成分あたりのmgを見てください。

血流の材料には、小規模ながら人での報告がある。

だから「入っている」ではなく、1日あたり何mgかで比べる。

性欲・性生活はどうなる?

勃起と性欲は別ものです。勃起は硬さの話、性欲は「したい気持ち」の話。EDがあっても性欲は保たれる人もいれば、両方まとめて落ちる人もいます。

大規模研究では、ED・性欲低下・朝立ちの減少という「性の3症状」がそろって現れるとき、テストステロン低下との関連が強いと整理されました 確度 高(Wu 2010)。逆に言えば、3つのうちEDだけなら、ホルモン以外の原因を先に考えます。

テストステロンを補充した大規模試験(TTrials)では、性的な活動・性欲・勃起機能のいずれもプラセボ(見た目は同じで中身の入っていない偽物)より改善しました 確度 高(Snyder 2016)。ただし対象は65歳以上でテストステロンが低い男性です。誰にでも当てはまる話ではありません。

研究 誰に 性欲・性生活の結果
Wu 2010 中高年男性 3,369人 ED・性欲低下・朝立ち減少の3つ同時が低テストステロンと関連。
Snyder 2016 65歳以上・低テストステロン 790人 1年の補充で性欲と性的活動が改善。
Gonzales 2002 21〜56歳の男性、マカ1.5g/3g・12週 8週から性欲の改善を報告。テストステロンは変化なし。

マカの試験は興味深い結果でした。性欲の改善が報告された一方で、血液中のテストステロンは動いていません(Gonzales 2002)。つまりホルモンの数値だけが性生活を決めているわけではない、ということです。人数は少なく、追試も必要です。

なお、性欲の低下は珍しくありません。不妊治療を受ける男性では、性欲低下や満足度の低下がもっとも多い訴えで、報告により8.9〜68.7%と幅があります 総説(Lotti 2018)。数字の幅の広さは、測り方がばらついていることを示します。

性欲が落ちたとき、原因はホルモンだけではない。

睡眠・ストレス・関係の問題も重なる。まずは血液検査で切り分ける。

活力・疲れとの関係は?

ここは正直に書きます。「活力がみなぎる」と言い切れる強い証拠は、まだ多くありません。ただし「何を測ったか」を見ないと、結論を取り違えます。

TTrials の活力パートでは、テストステロン補充を1年続けても、疲労スコアが大きく改善した人の割合はプラセボと差がありませんでした 確度 高(Snyder 2016)。ここで測ったのは質問票による疲労感です。一方で同じ試験で、性機能と気分は改善しています。つまり「全部だめ」ではなく、指標によって出方が違うという結果でした。

運動の分野では別の見え方をします。シトルリンマレート8gを運動前に飲んだ8件の試験をまとめたメタ分析では、限界までの反復回数が平均で約3回(6.4%)増えました 確度 高(Vårvik 2021)。効果量としては小さく、測ったのは筋トレの回数です。「夕方まで元気か」という日常のスタミナを測ったわけではありません。

🔍 「効かない」と読む前に、何を測ったか

Snyder 2016… 1年後に疲労の質問票が一定以上よくなった人の割合。日々の体感の平均ではない。
Vårvik 2021… 筋トレで限界まで挙げた回数。競技寄りの指標で、日常の疲れではない。
共通の限界… 期間・用量・対象がばらばら。まとめて「活力」と呼ぶと話が壊れる。

軸 測られた指標 2026年時点の状況
疲労感 質問票(FACIT-Fatigue など) テストステロン補充で明確な差は出ていない(Snyder 2016)。
運動のスタミナ 限界までの反復回数 シトルリンで平均+3回。小さいが一貫(Vårvik 2021)。
血管の反応 NO依存の血管拡張・血流指標 松樹皮エキス+アルギニンで改善の報告(Nishioka 2007/Stanislavov 2008)。

日常の疲れには、もっと大きな要因が並びます。睡眠不足、肥満、飲酒、そして糖尿病などの病気です。これらは①で見た血管の話とそのまま重なります。だから活力の相談は、栄養だけで完結しません。

「疲れが取れる」と測った研究はまだ弱い。

ただし血管の測定値には報告がある。だから成分ごとのmgと、睡眠・体重を並べて考える。

射精・精子への影響は?

EDと精子の問題は、同じ人に重なりやすいことが分かっています。不妊の検査を受ける男性の約6人に1人に、EDまたは早漏がみられました 総説(Lotti 2018)。

理由は単純です。血管・ホルモン・心理という原因が、勃起にも精子づくりにも共通するからです。とくに肥満はどちらにも効いてきます。BMIと精子数を調べたメタ分析では、肥満の男性ほど乏精子症(精子が少ない状態)の割合が高いと報告されました 確度 高(Sermondade 2013)。

🔬 射精・生殖の軸で分かっていること
約6人に1人
不妊男性のED・早漏(Lotti 2018)
BMI↑で↑
乏精子症の割合(Sermondade 2013)
20人
マカ試験の規模(Melnikovova 2015)
精液所見は体調・禁欲期間で大きく揺れます。1回の結果で決めつけないのが原則です。

成分の研究はどうでしょうか。マカの二重盲検試験(本人にも担当者にも、どちらを飲んだか分からないようにする方法)では、1.75g/日を12週続けたところ、精子濃度と運動率が上がる傾向が見られました。ただし人数は20人と少なく、はっきりした差には届いていません(Melnikovova 2015)。

研究 設計 結果
Lotti 2018 総説 不妊男性の約1/6にED・早漏。性欲低下は8.9〜68.7%。
Sermondade 2013 メタ分析(21研究) BMIが高いほど乏精子症・無精子症が多い。
Melnikovova 2015 二重盲検RCT・20人・12週 精子濃度と運動率に上昇傾向。差は明確でない。

正直に書くと、シトルリンやアルギニンが精液所見をどう動かすかを調べた質の高い試験は、2026年時点で見当たりません。「血流に良いから精子にも良い」とは書けません。ここは埋めずに空けておきます。

妊活の軸では、成分より先にやることがある。

精液検査で現状を測り、体重と喫煙を整える。栄養の話はそのあと。

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どこで診て、何をすればいい?

行き先は泌尿器科、またはメンズヘルス外来・ED外来です。EDは適切に相談すれば対処法のある状態で、専門医にとっては日常的な相談です。

やること 中身
受診 泌尿器科・メンズヘルス外来。血糖・血圧・脂質・テストステロンも確認できる。
背景の治療 糖尿病・高血圧・脂質異常・ホルモンの問題を治療する。
ED治療薬 PDE5阻害薬。医療用医薬品なので必ず処方で(種類と禁忌)。
心理面のケア 歯車④が主なら、不安の扱い方を含めて相談する。
生活の土台 禁煙・体重・運動・睡眠・飲酒。血管を守る行動がそのまま土台になる。

土台づくりの具体策は、それぞれの記事にまとめています。内臓脂肪を落とす、運動、睡眠、お酒を控える。喫煙は血管への影響がとくに大きいので、やめる価値がいちばん高い項目です。

症状で気になるものがあれば、男性更年期(LOH)セルフチェック、性欲低下の原因、40代・50代の疲れ・活力低下 完全ガイド もどうぞ。

栄養は、この土台と一緒に整えるものです。サプリは食品であり、EDを治す薬ではありません。EDが続くなら、医療機関で原因を確かめたうえで、日々の栄養を見直してください。

受診で得られるのは、勃起の答えだけではない。

血糖・血圧・脂質・ホルモンの数値が、同じ日にまとめて分かる。

わかっていないこと

EDの原因を一つに特定するのは、簡単ではありません。多くの人で歯車が複数からんでおり、「これだけが原因」と言い切れないのが実際です。

心血管リスクとの関連も、集団で見た傾向です。「EDがある=必ず心臓が悪い」ではありません。過度に不安にならないでください。

成分の研究にも限界があります。この記事で挙げた試験は、人数が数十人規模のものが多く、期間も1〜3か月です。長く飲み続けたときにどうなるかは、まだ十分に調べられていません。だからこそ、ネットの自己判断ではなく、医師による総合的な評価が価値を持ちます。

分かっていないことを、分かったように書かないのが方針。

迷ったら、成分を増やすより検査の数値を先に取る。

よくある質問(FAQ)

EDは何歳から増えますか?

40代以降に相談が増えます。ただし若い世代でも心因性(歯車④)のEDは起こります。年齢に関わらず、続くなら相談してください。

一度うまくいかなかっただけでEDですか?

いいえ。疲れ・飲酒・緊張で一時的にうまくいかないのは自然なことです。むしろ「失敗した」という記憶が予期不安を生み、悪循環になることがあります。EDは継続する場合を指します。

EDは心臓病のサインって、本当ですか?

「必ず」ではありませんが、関連は複数の研究で示されています。ペニスの動脈が細く、動脈硬化の影響を早く受けるためです。糖尿病・高血圧・喫煙がある人は、受診時に血管の評価も相談する価値があります。

精力剤やサプリでEDは治りますか?

治りません。サプリは食品であり、EDを治す薬ではありません。背景に血管・神経・ホルモン・心理の要因があるので、まず医療機関での相談が基本です。

ED治療薬を安く手に入れる方法は?

個人輸入は避けてください。偽造品が多く、心臓の薬との併用で命に関わることもあります。医療機関で処方を受けるのが、結局いちばん安全で確実です。

精子や妊活にも関係しますか?

関係します。不妊の検査を受ける男性の約6人に1人にEDや早漏がみられました(Lotti 2018)。妊活を考えているなら、勃起の悩みと一緒に精液検査も相談してください。

迷ったときの順番は、受診 → 検査 → 生活 → 栄養。

この順番なら、自分に足りていないものを見たうえで量を選べる。

まとめ

  • ペニスの動脈は1〜2mmと細く、動脈硬化で先に詰まる。 だからEDは心臓病の予告状のことがある(Montorsi 2005/Vlachopoulos 2013)。
  • 勃起は血管・神経・ホルモン・心理の4つの歯車で動く。EDが多因子なのはこのため。
  • 40〜70代の約半数が経験する(Feldman 1994)。恥じる必要はない。
  • 性欲はEDと別の軸。低テストステロンでは3症状がそろいやすい(Wu 2010)。マカで性欲の改善報告もある(Gonzales 2002)。
  • 活力は指標によって結果が割れる。疲労の質問票では差が出ず(Snyder 2016)、運動の反復回数では小さな増加(Vårvik 2021)。
  • 射精・精子はEDと重なりやすい(Lotti 2018)。肥満は精子数に響く(Sermondade 2013)。
  • 精力剤・増大・個人輸入という3つの嘘に注意。ED治療薬は医療機関で。
  • 栄養で見るなら、成分名の並びではなく1成分あたりのmgを見る。

参考文献

  1. Montorsi P, Ravagnani PM, Galli S, et al. (2005) “The Artery Size Hypothesis: A Macrovascular Link Between Erectile Dysfunction and Coronary Artery Disease.” Am J Cardiol 96(12B):19M-23M. PubMedで検索 — ペニス動脈(1〜2mm)は冠動脈(3〜4mm)より細く、動脈硬化の影響を早く受けるため、EDが心血管疾患に先行して現れうる(動脈サイズ仮説)。
  2. Vlachopoulos C, Terentes-Printzios D, et al. (2013) “Prediction of Cardiovascular Events and All-Cause Mortality With Erectile Dysfunction: A Systematic Review and Meta-Analysis of Cohort Studies.” Circ Cardiovasc Qual Outcomes 6(1):99-109. PMID: 23300267 — EDのある男性は心筋梗塞(約1.6倍)・脳卒中・総死亡(約1.25倍)のリスクが高い。
  3. Feldman HA, Goldstein I, Hatzichristou DG, Krane RJ, McKinlay JB (1994) “Impotence and its medical and psychosocial correlates: results of the Massachusetts Male Aging Study.” J Urol 151(1):54-61. DOI: 10.1016/S0022-5347(17)34871-1 — 40〜70歳男性で、何らかの程度のEDの有病率は約52%(軽度17%・中等度25%・完全10%)。
  4. Gandaglia G, Briganti A, Jackson G, et al. (2014) “A Systematic Review of the Association between Erectile Dysfunction and Cardiovascular Disease.” Eur Urol 65(5):968-978. PMID: 24011423 — EDと心血管疾患は血管の病態を共有し、EDが早期マーカーになりうる。
  5. Wu FC, Tajar A, Beynon JM, et al. (2010) “Identification of Late-Onset Hypogonadism in Middle-Aged and Elderly Men.” N Engl J Med 363(2):123-135. DOI: 10.1056/NEJMoa0911101 — ED・性欲低下・朝立ちの減少という3症状がそろうとき、低テストステロンとの関連が強い(3,369人)。
  6. Schmidt MH, Schmidt HS (2004) “Sleep-related erections: neural mechanisms and clinical significance.” Curr Neurol Neurosci Rep 4(2):170-178. DOI: 10.1007/s11910-004-0033-5 — 夜間勃起はREM睡眠のたびに起こる生理現象。
  7. Cormio L, De Siati M, Lorusso F, et al. (2011) “Oral L-citrulline supplementation improves erection hardness in men with mild erectile dysfunction.” Urology 77(1):119-122. PMID: 21195829 — 軽度EDの男性24人・1.5g/日・1か月で勃起硬度スコアの改善を報告。
  8. Shirai M, et al. (2018) “Oral L-citrulline and Transresveratrol Supplementation Improves Erectile Function in Men With Phosphodiesterase 5 Inhibitors.” Sex Med 6(4):291-296. PMID: 30150102 — PDE5阻害薬を使っているED男性で、L-シトルリン+レスベラトロール併用により勃起機能の指標が改善(クロスオーバー試験)。
  9. Morita M, et al. (2014) Biochem Biophys Res Commun 454(1):53-57. PMID: 25445598 — シトルリン+アルギニン併用で血液中のアルギニンとNO指標が上昇。
  10. Suzuki T, et al. (2017) Biosci Biotechnol Biochem 81(2):372-375. PMID: 27667025 — 併用時に血液中のアルギニンが単独より増加。
  11. Nishioka K, et al. (2007) Hypertens Res 30(9):775-780. PMID: 18037769 — 松樹皮エキスがNO依存性の血管拡張を増強。
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  13. Feldman HA, et al. (2000) “Erectile dysfunction and coronary risk factors: prospective results from the Massachusetts Male Aging Study.” Prev Med 30(4):328-338. PMID: 10731462 — 心血管の危険因子を持つ男性ほど後にED発症。
  14. Inman BA, et al. (2009) “A population-based, longitudinal study of erectile dysfunction and future coronary artery disease.” Mayo Clin Proc 84(2):108-113. PMID: 19181643 — EDのある男性は将来の冠動脈疾患リスクが高い。
  15. Solomon H, et al. (2003) “Erectile dysfunction and the cardiovascular patient: endothelial dysfunction is the common denominator.” Heart 89(3):251-253. PMID: 12591819 — EDと心血管疾患は血管の内側の膜の不調という共通の根を持つ。
  16. Vlachopoulos C, et al. (2011) “Should patients with erectile dysfunction be evaluated for cardiovascular disease?” PMID: 22120928 — EDのある男性への心血管リスク評価を推奨。
  17. Gonzales GF, Córdova A, Vega K, et al. (2002) “Effect of Lepidium meyenii (MACA) on sexual desire and its absent relationship with serum testosterone levels in adult healthy men.” Andrologia 34(6):367-372. PMID: 12472620 — 21〜56歳の男性にマカ1,500mgまたは3,000mgを12週。8週目から性欲の改善を報告。テストステロンとエストラジオールは変化なし。
  18. Snyder PJ, Bhasin S, Cunningham GR, et al. (2016) “Effects of Testosterone Treatment in Older Men.” N Engl J Med 374(7):611-624. PMID: 26886521 — 65歳以上・低テストステロンの790人。1年の補充で性的活動・性欲・勃起機能は改善したが、疲労スコアの改善割合は明確な差にならなかった。
  19. Vårvik FT, Bjørnsen T, Gonzalez AM (2021) “Acute Effect of Citrulline Malate on Repetition Performance During Strength Training: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Int J Sport Nutr Exerc Metab 31(4):350-358. DOI: 10.1123/ijsnem.2020-0295 — 8件・137人。シトルリンマレート8gで限界までの反復回数が平均約3回(6.4%)増加。効果量は小さい。
  20. Lotti F, Maggi M (2018) “Sexual dysfunction and male infertility.” Nat Rev Urol 15(5):287-307. PMID: 29532805 — 不妊男性の約6人に1人にEDまたは早漏。性欲低下・満足度低下は報告により8.9〜68.7%。
  21. Sermondade N, Faure C, Fezeu L, et al. (2013) “BMI in relation to sperm count: an updated systematic review and collaborative meta-analysis.” Hum Reprod Update 19(3):221-231. PMID: 23242914 — BMIが高いほど乏精子症・無精子症の割合が高い。
  22. Melnikovova I, Fait T, Kolarova M, et al. (2015) “Effect of Lepidium meyenii Walp. on Semen Parameters and Serum Hormone Levels in Healthy Adult Men: A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Pilot Study.” Evid Based Complement Alternat Med 2015:324369. PMID: 26421049 — 20〜40歳の20人にマカ1.75g/日を12週。精子濃度と運動率に上昇傾向。ホルモンは有意に変化せず。
男ラボ編集部
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