イチョウ葉エキスは血流にいい?勃起・性欲・活力・精子の研究を論文27本で検証【2026年最新】
- イチョウ葉は世界で最も売れた植物系サプリの一つ。
- 記憶力でも足の痛みでも大きな試験は空振りだった。
- 勃起や性欲の試験は小さく偽薬と差が出ていない。
- 血流で選ぶなら、1成分ごとの配合量が書かれた設計を見る。
「血のめぐりにいい」という看板は、どこまで本当なのか。 男の4軸(勃起・性欲・活力・精子)で、何が調べられ、何が調べられていないかを分けました。
イチョウ葉エキスって何?

イチョウの「葉」から成分を抜き出したものです。ぎんなん(種)とは別物で、1960年代にドイツで医薬品になりました。
臨床試験で使われた抽出物には規格があります。配糖体24%以上、テルペンラクトン6%以上。かぶれの原因のギンコール酸は5ppm未満です。
「血のめぐり」の看板は試験管の性質から来ています。ギンコライドが血小板を固める合図をじゃますると報告されました。試験管で見えた性質が、人でも同じだけ働くとは限りません。この距離が本題です。
| 呼び名 | どこから | 扱い |
|---|---|---|
| イチョウ葉エキス | 葉 | 本文の主題 |
| ぎんなん | 種 | 食品。中毒はこちら |
| ギンコール酸 | 葉・果肉 | かぶれの原因 |
葉から割合をそろえて抜き出したものが、イチョウ葉エキス。
看板は試験管の性質から来た表現。ぎんなんとは別です。
血流にいいって本当?

人間でデータが厚いのは、歩くと足が痛む症状です。出発点は2000年の報告。8件を集めると、歩ける距離は対照群より34m長い。著者自身が「差はささやか」と書いています(Pittler 2000/文献1)。確度 高(古いメタ分析)
34mは横断歩道1本ぶんです。
13年後、差は消えた
13年後、厳しい基準で集め直したシステマティックレビュー(世界中の研究を漏れなく集めて整理したもの)が出ます。対象は14件・739人。歩ける距離を見た11件・477人では64.5m長く歩けましたが、その差は有意(偶然では説明しにくい差)とは言えません(Nicolaï 2013/文献2)。確度 高(コクラン)
距離が伸びたのに結論が弱いのは、質の低い試験が基準で落ちたからです。
血圧や心臓は動いた?

血圧と心臓も動きません。3,069人で240mg/日でも血圧は下がらず(Brinkley 2010/文献7)、心血管の病気の発生にも差なし(Kuller 2010/文献6)。確度 高(大規模RCTの解析)
同じ血流でも材料から攻める設計は別の系統です。一酸化窒素(血管をゆるめて広げる物質)の材料になるL-シトルリンやL-アルギニンが代表格です(血流・NO系サプリの選び方)。
| 報告 | 規模 | 物差し | 結果 |
|---|---|---|---|
| Pittler 2000 | 8件 | 歩ける距離 | +34m。差は確か |
| Nicolaï 2013 | 14件・739人 | 歩ける距離 | +64.5m。確かとは言えず |
| Chen 2019 | 10件・1,201人 | ねばりけ | 改善報告。質は低い(文献15) |
| Mashayekh 2011 | 男性9人 | MRIの脳血流 | わずかな増加(文献17) |
質の高い試験を集めるほど、「血流にいい」の根拠は薄くなりました。
血流で比べるなら、材料と配合量が開示された設計が手がかりです。
勃起への研究はどこまで?

偽薬と比べた試験は2本あり、どちらも差を示していません。「血のめぐりの話は、そのまま勃起の話につながる」という連想が、データになっていない領域です。
起点は1990年代の報告です。血管性の勃起障害がある男性で、超音波で測った血流の指標が良くなったとされます。ただし比べる相手がいません。
韓国の報告は、抗うつ薬で性機能が落ちた人をイチョウ葉19人と偽薬18人に分け、二重盲検(本人にも担当医にも、どちらを飲んだか分からないようにする方法)で2か月。差はありません(Kang 2002/文献12)。英国の24人・12週も同じでした(Wheatley 2004/文献13)。確度 中(いずれも小規模)
測ったのは「抗うつ薬で落ちた性機能が戻るか」です。 加齢や生活習慣による勃起のコンディションではありません。両群とも試験前より良くなっており、偽薬でも変化が出る領域です。
原因の切り分けは原因別の整理へ。
| 研究 | 設計 | 規模・期間 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 1990年代の報告 | 対照群なし | 男性・長期 | 改善報告。比較なし |
| Kang 2002 | 二重盲検・偽薬対照 | 37人・8週 | 偽薬との差なし |
| Wheatley 2004 | 三重盲検・偽薬対照 | 24人・12週 | 偽薬との差なし |
勃起を偽薬と比べた試験は2本。測ったのは薬の副作用からの回復です。
血流側から選ぶなら、1成分ごとのmgが開示された設計が判断材料になります。
性欲や性生活の研究は?

男性の性欲を主な物差しにした質の高い試験は、2026年時点で見当たりません。あるのは抗うつ薬の副作用と、女性を対象にした試験です。
5件のRCT・計475人の整理では、閉経後の女性に良い報告がある一方、抗うつ薬を使う人では差がない。著者らは「効果は限定的」とまとめました(Niazi Mashhadi 2021/文献22)。確度 中(5件・475人)
広告の元ネタは1998年の報告です。性機能が落ちた63人のうち84%、男性30人では76%が改善したとされます(Cohen 1998/文献23)。確度 低(対照群なし)
これも比べる相手がいない研究です。84%が一人歩きし、偽薬と比べた2本では差が出ていません。
測られたのは「薬の副作用で落ちた性欲」です。 睡眠不足や体重増加で落ちた性生活の満足度には、別の物差しが要ります。
計475人。
主に測った試験。
相手なし。
性欲を調べた試験はあるが、対象は「抗うつ薬の副作用」に偏っています。
日常の性生活で悩むなら睡眠と体重を先に見直し、成分は配合量で選びます。
疲れや活力の研究はある?

日常の「夕方まで持たない」を測った試験は見当たりません。人で疲労を見た報告は、多発性硬化症(MS)の患者が対象です。
MS患者22人に240mg/日を4週間投与した試験では、疲労の尺度で改善が報告されました(p=0.024)。一方、抑うつ・不安・生活機能には差がありません(Johnson 2006/文献24)。確度 低(22人・4週)
後の大きな試験では、認知機能に偽薬との差はありません(Lovera 2012/文献25)。確度 中(RCT)
22人が測ったのは病気による強い疲労感で、健康な男性の日中のスタミナではありません。GEM試験でも疲労は評価項目にありません。
つまりこの軸は「効かないと分かった」のではなく、まだ測られていないが正確です。
疲労を測った試験はMS患者22人だけ。健康な男性の元気は測られていません。
活力で比べるなら、1成分ごとの配合量を開示した製品から絞るのが早道です。
精子や妊活への影響は?

ヒトで精液所見を調べた質の高い試験は、2026年時点で見当たりません。あるのは試験管の実験だけで、結果も良い方向ではありません。
1999年の報告が2本あります。洗浄した精子を高い濃度の抽出物に入れると、24時間後と48時間後に運動率が低下(Ondrizek 1999/文献26)。高濃度で卵子への侵入も減っています(文献27)。確度 参考(試験管)
ただし条件を確認してください。精子を1〜2日間、高濃度の液に漬ける実験です。口から飲んで薄まった状態とは違い、「妊活に悪い」とは言えません。
それでも射精や精液の所見が良くなるという人のデータは無いのが現在地です。
精子や妊活を調べたヒトの試験は見当たりません。あるのは試験管の実験だけ。
妊活中ならまず精液検査で現状を測る。成分を比べるのはその後、配合量の開示を手がかりに。
記憶力への効果はどこまで?

数千人規模の試験が2本あり、どちらも認知症の予防では届きませんでした。米国のGEM試験は75歳以上の3,069人を中央値6.1年追い、発症も記憶や注意の低下ペースも変わりません(DeKosky 2008/文献3、Snitz 2009/文献4)。確度 高(大規模RCT)
フランスの2,854人・5年でも、診断は61人対73人(Vellas 2012/文献5)。一方、認知症と診断された13件・2,381人の解析では、240mg/日でSKTという尺度が偽薬より良好です(Hashiguchi 2015/文献9)。予防と治療は別です。
| 試験 | 対象・規模 | 用量/期間 | 結果 |
|---|---|---|---|
| GEM 2008/2009 | 75歳以上 3,069人 | 120mg×2・6.1年 | 発症も低下ペースも差なし |
| GuidAge 2012 | もの忘れ自覚2,854人 | 240mg/日・5年 | 61人 対 73人 |
| Hashiguchi 2015 | 13件・2,381人 | 12〜52週 | 240mg群に良い報告 |
予防目的では、数千人規模の試験が2本とも空振りでした。
診断がついた人の研究では240mgで良い報告があります。別の話として読みます。
出血のリスクはある?

人の試験では、一律に出血しやすくなるという結果は出ていません。止血の指標を18件・計1,985人でまとめた解析でも、変化は認められず(Kellermann 2011/文献10)。ただし血を固まりにくくする性質はあります。確度 高(メタ分析)
健康な男性12人にワルファリンを投与した試験でも、意味のある変化は出ていません(Jiang 2005/文献11)。ただし短期・12人の結果です。GEM試験では出血性脳卒中が24件中16対8。差は確かとは言えませんが、方向は覚えておきます。
発がん性の報告はどう読む?

米国の国家毒性プログラムがラットとマウスに2年間投与し、雄マウスで肝臓、雄ラットで甲状腺の腫瘍が増えました(Rider 2014/文献18)。確度 参考(げっ歯類・高用量)
ただし餌に混ぜず胃に流し込みます(議論はPMC4449306)。それでも何年も飲み続ける使い方に未知が残る事実は動きません。
ぎんなんは食べていい?

ぎんなん(種)は別の話です。ギンコトキシンがビタミンB6の働く場所に割り込みます。日本の症例では2歳の女児が大量に食べ、9時間後にけいれんを起こしました(Kajiyama 2002/文献19)。中毒報告は6歳未満が約4分の3。茶碗蒸しの数個は問題ありません。
誰でも出血しやすくなるという結果は、人の試験では出ていません。
薬を飲んでいる人と手術予定のある人は、必ず医療者に伝えてください。
製品選びで見るべき点は?

見るのは3つ。規格、混ぜ物の検査、表示の根拠です。
第一に成分の割合。「120mg配合」だけでは、規格を満たす抽出物かどうか判断できません(読み方は成分表示ガイド)。
第二に混ぜ物。市販品にルチンなど別の植物由来の成分を加えた例があります。従来の分析法で量が多く見えるためです(文献20・21)。確度 中(分析研究)
第三に表示区分。日本の機能性表示食品は事業者が届け出るしくみで、国の個別審査ではありません。量を1成分ずつ開示した製品は比較しやすい(組み合わせの考え方)。
| 見る場所 | 望ましい記載 | 要注意 |
|---|---|---|
| 成分の割合 | 配糖体24%・ラクトン6% | mg数のみ |
| ギンコール酸 | 5ppm未満と明記 | 記載なし |
| 品質検査 | 第三者分析に言及 | 言及なし |
| 表示区分 | 届出番号がある | 「認可」表記 |
見るのは「何%入っているか」と「検査をしているか」の2点。
混ぜ物の報告がある原料なので、作り手の姿勢が品質差になります。
よくある質問(FAQ)
男性機能のために飲む価値はありますか?
勃起・性欲・射精のどれも、主な物差しにした質の高い試験が足りません。血流で比べるなら、L-シトルリンやL-アルギニンのように配合量を開示して比較できる成分のほうが材料はそろっています。
イチョウ葉は「効かない」ということですか?
単純化はできません。予防目的は空振りでしたが、診断がついた人では240mg/日で良い報告があります。誰に・どれだけの量を・どの期間・どういう設計でを確認すれば、大半の情報は仕分けられます(同じ枠組みでタウリンとNMNも整理)。
研究で使われた量は1日120〜240mg。目的によって結論が変わります。
男の4軸で選ぶなら、配合量を開示した設計から比べます。
イチョウ葉は「研究が足りない成分」ではなく「研究の結果、期待が削られた成分」。
ただし男の4軸は、まだほとんど測られていません。だから量を開示した設計から比べます。
参考文献
- Pittler MH, Ernst E. (2000) Ginkgo biloba extract for the treatment of intermittent claudication: a meta-analysis of randomized trials. Am J Med. PMID: 11014719
- Nicolaï SPA, et al. (2013) Ginkgo biloba for intermittent claudication. Cochrane Database Syst Rev. PMID: 23744597
- DeKosky ST, et al. (2008) Ginkgo biloba for prevention of dementia: a randomized controlled trial. JAMA. PMID: 19017911
- Snitz BE, et al. (2009) Ginkgo biloba for preventing cognitive decline in older adults: a randomized trial. JAMA. PMID: 20040554
- Vellas B, et al. (2012) Long-term use of standardised ginkgo biloba extract for the prevention of Alzheimer’s disease (GuidAge). Lancet Neurol. PMID: 22959217
- Kuller LH, et al. (2010) Does Ginkgo biloba reduce the risk of cardiovascular events? Circ Cardiovasc Qual Outcomes. PMID: 20123670
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- Ondrizek RR, et al. (1999) An alternative medicine study of herbal effects on the penetration of zona-free hamster oocytes and the integrity of sperm deoxyribonucleic acid. Fertil Steril. PMID: 10065791
本記事は公表された研究知見の客観的な紹介です。商品の効果を保証するものではなく、疾病の診断・治療・予防を目的としません。持病のある方、服薬中の方、手術予定のある方は必ず医師・薬剤師にご相談ください。





