- ザクロで勃起を測った試験は、差がつかなかった。
- 精子は+62%の報告があるが、別の植物との合剤。
- いちばん確かなのは血圧が約5下がるという結果。
- 選ぶときは果汁の量ではなく、1成分ごとの配合量を見る。
「ザクロは男性ホルモンにいい」「精力にいい」。赤い果実にはこの手の噂がつきものです。ここでは2026年9月時点で実在を確認できた研究だけを、誰に・何を・何週間・どんな数字で調べたのかまで見ます。
ザクロの何が注目されている?

注目されているのは、ポリフェノールという色素成分です。とくにプニカラギンとエラグ酸の2つが研究の中心にあります。どちらも酸化ストレス(体がサビつくような状態)を抑える働きで調べられてきました。
体のサビは血管を傷めます。精子も酸化に弱い細胞です。だからサビを抑える成分は、男性の話題で必ず登場します。ただし「関わりうる」と「確かめられた」は別です。
まず、研究で使われた「形」と「量」を並べます。ここが噂と実験の境目です。
| 形 | 研究で使われた量 | 主に測られたもの |
|---|---|---|
| ザクロ果汁(ジュース) | 1日 150〜330 mL | 血圧・血管の反応・勃起の点数 |
| 果実エキス(プニカラギン30%) | 1日 750 mg | 運動の持久時間 |
| 果皮エキス+カカオ種子の合剤 | 1日 400 mg | 性機能の点数・ホルモン |
| 果実エキス+ガランガルの合剤 | 1日 1錠(3か月) | 精液所見 |
ジュースと果皮エキスは別物です。噂が混乱するのは、この4つを一緒くたにするからです。
ザクロは「果汁」「果実エキス」「果皮の合剤」で別物。
噂を読むときは、どの形を何mg使った研究かを先に見る。
勃起の研究はどこまで?

人で勃起機能を測った試験は1本あり、差はつきませんでした。2007年のアメリカの試験です。
○ 軽度から中等度のEDの男性53人が対象。ザクロジュースと、プラセボ(見た目は同じで中身が入っていない偽物)を4週間ずつ入れ替えて飲みました。二重盲検(本人にも担当医にも、どちらを飲んだか分からないようにする方法)です。改善したと答えた人はジュースの期間に多い傾向でしたが、有意差(偶然では説明しにくい差)には届きませんでした(p=0.058)。
- Forest CP, et al. (2007) Int J Impot Res PMID: 17568759 確度 中(53人・4週×2)
数字の並びは良い方向でした。ただし53人・4週間では、偶然との区別がつきません。研究者自身も、もっと大きく長い試験が要ると書いています。「有望だが未証明」という段階です。
| 調べたこと | 結果 | 言えないこと |
|---|---|---|
| 勃起の点数(53人) | 改善報告は多め・p=0.058 | 効くと結論すること |
| 試験の規模 | 4週間ずつの入れ替え | 長期に続けたときの話 |
測ったのは4週間・53人での点数。差はつかなかった。
この軸は「効く」と読めない。飲むなら1日150〜300 mLという研究の量で比べる。
性欲の研究はある?

ジュースで性欲を測った試験は見当たりません。合剤なら1本あります。2025年に報告された、ザクロ果皮とカカオ種子の合剤の試験です。
○ 40〜70歳の男性120人が対象。合剤400mgか偽薬を84日間飲みました。二重盲検です。性的な欲求・思考・行動をたずねる質問票の点数と、勃起の硬さの点数が、偽薬より改善したと報告されています。
- Srivastava MK, et al. (2025) Int J Med Sci 22(2):383-397 PMID: 39781534 確度 中(120人・84日・企業主導)
注意が3つあります。カカオとの合剤で、ザクロ単独の結果ではありません。原料メーカーが関わる試験でもあります。日本の店頭にあるジュースとは形も量も違います。
△ 一方、ジュース側の報告は学会抄録どまりです。60人が2週間飲み、唾液中のテストステロンが平均24%高く、気分の点数も上がったとされます。査読を経た論文ではなく、偽薬群もありません。
- Al-Dujaili E, Smail N. (2012) Endocrine Abstracts 28 P313 学会抄録 確度 低め(抄録・対照なし)
| 知りたいこと | 人での研究 | 読み方 |
|---|---|---|
| ジュースと性欲 | 見当たらない | 「効かない」ではなく未測定 |
| 果皮+カカオと性欲 | 120人で改善の報告 | 合剤・企業主導という条件つき |
ジュースで性欲を測った研究は、探した範囲で見当たらない。
あるのは果皮とカカオの合剤の試験。読むときは400mgという量と、誰が資金を出したかを見る。
元気とホルモンの研究は?

持久時間と、加齢に伴う症状の点数では、人での報告があります。ただし測っている尺度が違うので、分けて読みます。
○ アマチュアの自転車選手26人が対象。果実エキス750mg(プニカラギン30%)を15日飲み、偽薬と入れ替えて比べました。疲れ果てるまでの時間が18〜171秒長くなり、一定の呼吸指標に達するまでの時間も延びています(p<0.02、p<0.001)。
- Torregrosa-García A, et al. (2019) Nutrients 11(4):721 DOI: 10.3390/nu11040721 確度 中(26人・15日)
測ったのは競技の持久時間です。「夕方まで元気が続くか」という日常の体感とは尺度が違います。そのまま読み替えられません。
○ 加齢の症状を測った試験もあります。36〜55歳の男性120人が、果皮+カカオの合剤200mgか400mgを56日間。加齢男性の症状の点数が下がり、握力が上がりました。総テストステロンは21.4%と24.6%、遊離テストステロン(実際に体で働ける状態のテストステロン)は39.2%と48.3%高くなったと報告されています。
- A proprietary blend of Punica granatum rind and cocoa seed extracts (2022) Int J Med Sci 19(8):1290-1299 PMC9346391 確度 中(120人・56日・企業主導)
△ 重量挙げの直後と翌日に、ホルモンの動きを調べた二重盲検の試験もあります。運動という負荷をかけた場面での反応を見たもので、日常の疲れを測った試験ではありません。
- Effects of polyphenol-rich pomegranate juice following weightlifting (2020) J Int Soc Sports Nutr PMID: 32143716 確度 低め(運動負荷の場面)
| 測られたもの | 結果 | 言えないこと |
|---|---|---|
| 競技の持久時間(26人) | 18〜171秒の延長 | 日常のだるさへの効果 |
| 加齢の症状点数(120人) | 点数が低下・握力が向上 | ザクロ単独の効果 |
| 唾液テストステロン(60人) | 平均24%高い(抄録) | 査読を経た結論 |
数字の見え方には注意が要ります。割合が大きく見えても、比べた相手は自分の飲む前の値です。しかも合剤で、企業主導の試験。だから「量が開示された製品どうしを比べる」という読み方に落とします。
持久時間で測れば延びたが、それは競技の尺度。
日常の元気を測った試験ではない。判断はホルモンの採血と、1成分ごとのmgで行う。
精子と妊活の研究は?

人での報告は1本。ザクロ単独ではなく、合剤の試験です。2014年のデンマークの試験です。
○ 精液所見が振るわない男性66人が完了しました(実薬34人・偽薬32人)。ザクロ果実エキスとガランガル(ショウガの仲間の根)の錠剤を3か月。総運動精子数が平均62%増え(2,340万→3,780万)、偽薬群は20%増でした(p=0.026)。
- Fedder MDK, et al. (2014) PLoS One 9(9):e108532 PMID: 25275520 確度 中(66人・3か月・合剤)
◎ ただし、この結果は公的にはまだ認められていません。欧州の食品安全機関は2015年、この合剤の表示を審査しました。結論は「因果関係は確立できない」。試験が1本で、再現がないことが理由です。
- EFSA NDA Panel (2015) EFSA Journal 13(2):4097 DOI: 10.2903/j.efsa.2015.4097 確度 高め(公的評価)
動物では、もっと派手な結果が並びます。
▽ ラットに7週間ジュースを与えると、精子濃度と運動率、精子をつくる細胞の密度が増えました。テストステロンも上がり、酸化の指標も改善しています。
- Türk G, et al. (2008) Clin Nutr PMID: 18222572 確度 低め(動物)
▽ 化学物質で精巣を傷めたラットでは、ジュースが精子の障害と細胞死を和らげたと報告されています。
- Ameliorating effect of pomegranate juice on testicular damage (2013) PMID: 24081635 確度 低め(動物)
動物の用量は、人が現実に飲める量とかけ離れています。筋書きは通っていても、人にそのまま持ち込めません。
人での報告は合剤で1本。公的評価では因果関係は未確立。
妊活中はまず精液検査で現状を測る。足す材料は1成分ごとのmgで選ぶ。
血圧と血流はどうなる?

ここがいちばん厚い領域です。統合解析で血圧の上の数字が約5下がっています。
◎ 14の試験、のべ573人を集めたメタ分析(いくつもの研究をまとめて一つの結論を出す方法)です。収縮期血圧(血圧の上の数字)が5.02 mmHg低下しました(95%信頼区間 −7.55〜−2.48)。1日300 mL以下では6.11 mmHgの低下。300 mLを超えると、差は有意ではなくなりました。
- Impact of pomegranate juice on blood pressure (2023) Phytother Res PMID: 37461211 確度 高め(14試験573人)
つまり、上の数字が5前後動く計算です。個人差は大きく、体感できる幅ではありません。薬の代わりにもなりません。
数字は動くが、幅は小さい。300 mLを超えると差は見えなくなる。
「多く飲むほど効く」は、この統合解析では支持されていない。
△ 血管の反応そのものを測った試験もあります。高血圧の男性13人が150 mLを飲み、4〜6時間後に血圧と血管の広がりを測りました。人数が少なく、単回の観察です。
- Asgary S, et al. (2014) Phytother Res PMID: 24575134 確度 低め(13人・単回)
血管の話につながる道すじは、こう説明されています。
勃起は血流の現象なので、土台としては同じ線の上にあります。ただし血圧の統合解析と、勃起の点数の試験は別の尺度です。血流側の材料は一酸化窒素を増やす方法、血圧と勃起の関係は高血圧とEDにまとめました。
血圧の上の数字が約5下がる、というのが最も確かな結果。
体感する幅ではない。研究に合わせるなら1日300 mL以下という量になる。
「女性ホルモン」の噂は?

ジュースで体のホルモンが女性化する、という根拠は見当たりません。この噂は「ザクロにエストロゲンが含まれる」という古い話から広がりました。
種子油などに、植物由来の似た構造の成分が微量報告されることはあります。ただし日常で飲む量で、体のホルモンを左右する話ではありません。
前立腺については、別の角度から調べられています。
○ 前立腺がんの治療後にPSAが上がった男性を対象に、果実エキス1gと3gを比べた試験があります。用量による差は見られませんでした。偽薬群は置かれていません。
- Pantuck AJ, et al. (2012) Prostate Cancer Prostatic Dis PMID: 22689129 確度 中(用量比較・偽薬なし)
ジュースが体のエストロゲンを動かすという根拠は無い。
心配する側にも期待する側にも、根拠として使えない噂。
飲むときの注意は?

注意は糖分と、薬の飲み合わせの2つです。どちらも「体にいいつもり」が裏目に出る場所です。
- 糖分:加糖の製品があります。100%でも果糖は入ります。研究で使われたのは1日300 mL以下です。
- 薬の代謝:グレープフルーツと同じ酵素(CYP3A4)への影響が報告されています。
- 相談が必要な薬:スタチン、一部の血圧の薬、ワルファリンなど。服薬中は医師か薬剤師へ。
- 治療の代わりにしない:ED・妊活・高血圧は、まず医療機関での評価が先です。
血圧の薬を飲んでいる人はとくに注意が要ります。下げる方向が重なる可能性があるためです。
| 状況 | どうするか |
|---|---|
| 薬を飲んでいない | 無糖の果汁を1日300 mL以下で |
| 血圧・脂質・血液の薬 | 始める前に薬剤師へ相談 |
| ED・妊活で悩んでいる | まず受診と検査。食品は並行で |
1日300 mL以下、無糖。これが研究の範囲に収まる目安。
薬を飲んでいる人は、始める前に薬剤師へ一声かける。
何を見て選べばいい?

研究で使われた形と量に、製品を並べるだけです。形が変われば使われた量も変わるので、ここを外すと比べようがありません。
| 形 | 研究の量 | 買うときに見る場所 |
|---|---|---|
| 果汁 | 1日 150〜300 mL | 無糖か・果汁100%か |
| 果実エキス | 1日 750 mg | プニカラギンの%表示 |
| 果皮+カカオの合剤 | 1日 400 mg | 内訳のmgが書いてあるか |
困るのは「独自ブレンド」とだけ書かれた製品です。内訳が無ければ、研究の量と比べられません。量の開示は、成分をまたいで使える物差しです。
果汁なら300 mL、エキスなら750 mgが研究の目盛り。
内訳が書かれていない製品は、比べる作業そのものができない。
よくある質問
### ザクロジュースは勃起にいいですか?
人で調べた試験は1本あり、差はつきませんでした(p=0.058)。改善の報告は多めでしたが、53人・4週間では偶然と区別できません。症状が続くなら受診が先です。
### テストステロンは増えますか?
増えると書ける根拠はありません。人での報告は、果皮とカカオの合剤か、査読を経ていない抄録に限られます。動物では上がった報告がありますが、量が現実的ではありません。
### 妊活中に飲む価値はありますか?
合剤で総運動精子数が62%増えた試験が1本あります。ただし公的評価では因果関係は未確立です。まず精液検査で現状の数字を持つほうが確実です。
### どれくらい飲めばいいですか?
研究で使われたのは1日150〜300 mLの無糖果汁です。300 mLを超えると、血圧の統合解析でも差が見えなくなります。
質問の答えは、どれも「量と形」に戻ってくる。
300 mLという目盛りを外すと、研究と自分の飲み方が比べられなくなる。
まとめ
ザクロの噂は、軸ごとに根拠の厚みがまるで違います。
ザクロは魔法の果実ではありませんが、食卓に置く理由はあります。
判断の仕方は、どの軸でも同じでした。研究で使われた形と量を見て、自分の飲み方と並べる。この物差しは、ザクロでもL-シトルリンでも変わりません。
厚いのは血圧、薄いのは性欲。軸によって根拠の厚みが違う。
迷ったら、研究の量(300 mL・750 mg)と製品の表示を並べる。
参考文献
- Forest CP, et al. (2007) “Efficacy and safety of pomegranate juice on improvement of erectile dysfunction in male patients with mild to moderate erectile dysfunction: a randomized, placebo-controlled, double-blind, crossover study.” Int J Impot Res. PMID: 17568759 — 53人・4週×2、p=0.058で有意差なし。
- Srivastava MK, et al. (2025) “A Combination of Punica granatum Fruit Rind and Theobroma cacao Seed Extracts Enhances Sexual Function in Aging Males.” Int J Med Sci 22(2):383-397. PMID: 39781534 — 120人・400mg・84日。
- A proprietary blend of standardized Punica granatum fruit rind and Theobroma cocoa seed extracts mitigates aging males’ symptoms (2022) Int J Med Sci 19(8):1290-1299. PMC9346391 — 120人・56日、AMS点数と握力。
- Al-Dujaili E, Smail N. (2012) “Pomegranate juice intake enhances salivary testosterone levels and improves mood and well being.” Endocrine Abstracts 28 P313. 学会抄録 — 60人・2週、唾液テストステロン+24%(対照なし)。
- Torregrosa-García A, et al. (2019) “Pomegranate Extract Improves Maximal Performance of Trained Cyclists after an Exhausting Endurance Trial.” Nutrients 11(4):721. DOI: 10.3390/nu11040721 — 26人・15日、持久時間が延長。
- Effects of natural polyphenol-rich pomegranate juice on the acute and delayed response of homocysteine and steroidal hormones following weightlifting exercises (2020) J Int Soc Sports Nutr. PMID: 32143716
- Fedder MDK, et al. (2014) “An Extract of Pomegranate Fruit and Galangal Rhizome Increases the Numbers of Motile Sperm.” PLoS One 9(9):e108532. PMID: 25275520 — 66人・3か月、総運動精子数+62%(p=0.026)。
- EFSA NDA Panel (2015) “Scientific Opinion on a health claim related to pomegranate pomace extract and greater galangal rhizome powder and an increase in motile spermatozoa.” EFSA Journal 13(2):4097. DOI: 10.2903/j.efsa.2015.4097 — 因果関係は確立できないと結論。
- Türk G, et al. (2008) “Effects of pomegranate juice consumption on sperm quality, spermatogenic cell density, antioxidant activity and testosterone level in male rats.” Clin Nutr. PMID: 18222572 — 動物実験。
- Ameliorating effect of pomegranate juice consumption on carbon tetrachloride-induced sperm damage, lipid peroxidation and testicular apoptosis (2013). PMID: 24081635 — 動物実験。
- Impact of pomegranate juice on blood pressure: A systematic review and meta-analysis (2023) Phytother Res. PMID: 37461211 — 14試験573人、収縮期血圧 −5.02 mmHg。
- Asgary S, et al. (2014) “Clinical investigation of the acute effects of pomegranate juice on blood pressure and endothelial function in hypertensive individuals.” Phytother Res. PMID: 24575134 — 13人・150 mL。
- Pantuck AJ, et al. (2012) “A randomized phase II study of pomegranate extract for men with rising PSA following initial therapy for localized prostate cancer.” Prostate Cancer Prostatic Dis. PMID: 22689129 — 1g対3gの用量比較。
※本記事は栄養と研究知見の一般情報です。診断・治療にあたるものではなく、特定商品の効能を示すものでもありません。ED・妊活・血圧の不安は医師にご相談ください。






