カツアバとは?ブラジル伝統の「精力ハーブ」を論文で検証|「本物の種」の研究と、失敗しない選び方まで【2026年最新】
- 「カツアバ」は1本の木の名前ではない。何種類もの木の総称。
- 市販品の中身で多かったのは Trichilia catigua という木。
- この木には動物・試験管の研究がある。人での効果試験はまだ無い。
- だから選ぶ基準は学名と1日あたりの配合量(mg)が書いてあるか。
カツアバは19世紀からブラジルで飲まれてきた滋養・強壮ハーブです。名前は有名ですが、中身は意外と知られていません。勃起・性欲・活力・精子という4つの軸で、研究がどこまで進んだのかを正直に並べます。
| 軸 | どこまで調べられたか | 誰で測ったか |
|---|---|---|
| ① 勃起 | 取り出した陰茎の組織がゆるんだ(Antunes 2001) | ウサギの組織(試験管) |
| ② 性欲・性生活 | 脳内のドーパミンに働いた(Campos 2005)。性欲そのものを測った人の試験は見当たらない | マウス・ラット |
| ③ 活力・疲労 | 走らせた後の運動量と握力の落ち込みが減った(Martins 2018) | マウス |
| ④ 射精・生殖 | 薬品で傷つけた精巣で、精子の異常率が下がった(Chang 2022) | マウス |
カツアバって何の木?
カツアバは、特定の1植物を指す学術的な名前ではありません。 ブラジルで複数の樹木の樹皮に使われてきた、通称に近い呼び方です。南米の伝統素材という立ち位置はマカと似ていますが、マカが根菜なのに対しカツアバは樹皮。そして「どの木か」が定まっていない点が決定的に違います。
科の違う植物が同じ名前で売られています。当然、含まれる成分も変わります。つまり「カツアバ配合」と書いてあっても、それだけでは何の木か分かりません。ここがこの成分を読む出発点です。
名前は同じでも、木が違う。
研究が積み上がっているのは Trichilia catigua のほう。学名が書いていない製品は、この差を確かめられない。
何が働くと言われている?
名前が挙がるのはカツアビンというアルカロイド類、そしてフラボノイドとタンニンです。 ただし、その先の説明はまだ仮説の段階にあります。
いちばん報告が多いのは脳内のドーパミンへの作用です。ドーパミンは意欲や報酬に関わる神経伝達物質。ここが動くと「その気になる」の入口が変わる、という筋書きが立てられてきました。
Campos らの研究では、げっ歯類でうつ様の行動が減りました 確度 関連(動物)。脳の神経終末を取り出した実験で、ドーパミンとセロトニンの再取り込みが抑えられ、放出が増えていました(Campos 2005)。Viana らの研究でも、マウスに200 mg/kgを与えた実験で、ドーパミン系を介した作用が確認されています(Viana 2011)。
もう一つの筋書きが血管側です。血液が流れ込むには、血管をゆるめる一酸化窒素(血管をゆるめて広げる物質。NOと略される)が要ります。ブラジル在来植物をまとめた総説では、カツアバ類についてPDE5という酵素を抑える働きやNOを増やす働きが整理されています 確度 関連(動物・機序)(J Ethnopharmacol 2023)。
PDE5=血管をゆるめる信号を消してしまう酵素。ED治療薬はここを抑える。
ドーパミン=やる気や快感に関わる脳内の物質。
アルカロイド=植物が作る、体に作用しやすい化合物のグループ。
働き口は2つ言われている。脳のドーパミンと、血管をゆるめる仕組み。
どちらも動物と試験管までの話。人で確かめる一段が、まだ残っている。
勃起の研究はあるの?
あります。ただし人ではなく、ウサギから取り出した組織での実験です。 Antunes らは、ウサギの陰茎海綿体(勃起のときに血液で満たされる組織)の切片を使いました。Trichilia catigua の抽出物を加えると、組織は長く弛緩しました 確度 参考(試験管)。短い収縮が先に出ることもあったと報告されています(Antunes 2001)。
弛緩するというのは、血液が入りやすい状態に近づくということです。勃起の入口にある反応そのものと言えます。
一方で、逆の結果もあります。Kletter らは市販14製品から作った抽出物を、同じウサギ海綿体の試験にかけました。こちらは効果を示しませんでした(Kletter 2004)。
人での試験はどうか。勃起の指標(IIEFという質問票など)を測った質の高い試験は、調べた範囲では見当たりませんでした。EDに使えるかどうかは、まだ答えが出ていません。
勃起の組織そのものがゆるんだ、という報告がある。ただし材料の素性で結果が割れた。
だから見るべきは学名と1日あたりのmg。何を何g使ったのかが書けない製品では、この差を確かめようがない。
性欲の研究はどこまで?
正直に書きます。性欲そのものを人で測った試験は、調べた範囲では見当たりませんでした。 二重盲検(本人にも担当医にも、どちらを飲んだか分からないようにする方法)で性生活の満足度を比べた、といった研究は存在しません。
あるのは動物と、その手前の脳内物質の話です。前述のドーパミンへの作用がそれにあたります(Campos 2005/Viana 2011)。在来植物の総説でも、カツアバ類は動物の性行動に関する報告としてまとめられています 確度 関連(動物)(J Ethnopharmacol 2023)。
ここで大事なのは、何を測ったのかです。動物実験が測るのはマウントの回数のような行動。脳の実験が測るのは物質の量。どちらも人の「その気になるか」とは別の尺度です。
⭕ 測られた:げっ歯類の性行動、脳内のドーパミン量
❌ 測られていない:人のリビドー、性生活の満足度、パートナー評価
同じ棚に並ぶマカでは、性欲を質問票で測った小規模な人の試験が存在します。伝統ハーブといっても、研究の進み方はそれぞれです。カツアバはまだ手前の段階にいます。
動物の行動と脳内物質までは調べられている。人の性欲は、まだ誰も測っていない。
性欲を人で測った試験があるマカとは、進み具合が違う。だから期待の温度は別にして、量の開示で選ぶ。
疲れと活力の研究は?
4つの軸のなかで、いちばん具体的な数値が出ているのがこの軸です。 2018年の研究では、マウスに Trichilia catigua の水とアルコールの抽出物を与えました 確度 関連(動物)。
トレッドミルで強制的に走らせて疲れさせたあと、最も高い用量のグループでは自発的な運動量が増え、握力の落ち込みが小さくなりました。統計的にも有意(偶然では説明しにくい差)でした。ただし差が出たのは一部の観察時点だけです。論文自身も「部分的に減らした」と書いています(Martins 2018)。
同じ研究では抗酸化作用も測られています。体の中で酸化ストレス(体がサビつくような状態)が進むと、疲労も回復しにくくなります。ここに働くという方向性です。
・負荷:トレッドミルで強制的に走らせる
・測った項目:走ったあとの自発運動量、握力の低下幅
・結果:高用量で運動量が増え、握力の低下が小さくなった
・限界:差が出たのは一部の時点のみ。「部分的」と論文に明記
測ったのは実験動物の運動量です。人が言う「夕方まで気力が持たない」とは別の尺度になります。この軸は、伝統的な使われ方(疲労・気力)と研究の方向が一致している点が面白いところです。
走らせたマウスの運動量と握力では、差が出た。
ただし尺度は動物の運動量で、日常の体感ではない。人での確認はこれから。まずは1日あたりのmgが書かれた製品を選び、量を揃えて比べる。
精子と妊活への影響は?
ここには、意外に新しい研究があります。 2022年、中国のグループがマウスで実験しました。DEHPというプラスチックの可塑剤で生殖機能を傷つけたうえで、Trichilia catigua の抽出物を28日間与えています 確度 関連(動物)。
高用量のグループでは、精子の異常率が下がりました。性ホルモンの値は上がり、精巣と精巣上体の臓器指数も改善しています。抗酸化酵素の働きも高まりました(Chang 2022)。
ここでも尺度を確認します。測ったのは「毒で傷つけたマウスがどこまで戻ったか」です。健康な男性の精液所見(精子の数や運動率)を見た試験ではありません。人の妊活に当てはめられる段階ではありません。
男性側の話ではありませんが、パートナーが妊娠中・妊活中の家庭では避けるのが無難です。
まとめると、生殖の軸は「動物では守る方向の報告があり、妊娠中には注意すべき報告もある」という状態です。
傷つけたマウスの精子では改善の報告がある。健康な人の精液検査で測った研究はまだ無い。
妊活が目的なら、まず精液検査で自分の現在地を測る。サプリはそのあと、1日量のmgが書かれたものを選ぶ。
ヒトで試された結果は?
人を対象にした試験は存在します。ただし安全性の試験であって、効果の試験ではありません。 2005年、健康な男女にカツアバを含む4種混合の飲料を1日2回・28日間投与しました。重い有害事象は報告されず、血液や生化学の数値にも変化は出ませんでした 確度 中(人での試験)(Oliveira 2005)。
言い換えると、「4週間飲んで大きな問題は起きなかった」までが人で確かめられたことです。勃起や性欲がどうなるかは、この試験では測っていません。
効果を見た試験はどうか。RCT(くじ引きで2つのグループに分けて比べる、いちばん信頼できる試験)で、プラセボ(見た目は同じで中身が入っていない偽物)と比べた研究は見当たりませんでした。
人で分かっているのは「4週間飲んで大きな問題は出なかった」まで。
効果を測った試験はこれから。だから期待ではなく、学名と配合量という確かめられる情報で選ぶ。
市販品の中身はバラバラ
この記事でいちばん伝えたい研究がこれです。 オーストリアの研究グループが、市販14製品を形態・化学・機能の3方向から分析しました(Kletter 2004)確度 中(製品の実測分析)。
❗ 半数以上が、別の生薬で混ぜ物されていた
❗ 実際の中身は Trichilia catigua の樹皮が多数派だった
❗ 50%の製品から、トロパンアルカロイドが検出された
❗ そこから作った抽出物は、ウサギ海綿体の試験で効果を示さなかった
皮肉なことに、この分析で「実際に入っていた多数派」だった Trichilia catigua こそ、研究が積み上がっている木です。名前と中身のねじれが、この成分の分かりにくさを作っています。
効果が出なかった実験の材料は、半分以上が別の木だった。
成分の問題ではなく、出どころの問題。学名と量の開示で避けられる。
トロパンアルカロイドは危なくない?
「どの製品にどれだけ入っているか分からない」状態そのものがリスクです。 トロパンアルカロイドは、アトロピンやスコポラミンを含む化合物のグループ。量によっては体に作用します。検出されたのは14製品のうち50%でした(Kletter 2004)。
心臓の持病がある方、服薬中の方、妊娠・授乳中のパートナーがいる家庭では、素性の不明な製品は避けてください。
入っているかどうかを、買う側は確かめられない。
だから原料の産地と検査体制を書いている製品を選ぶ。書いていないものは、そこが分からないという情報。
選ぶときに見る3つの点
カツアバは「避けるべき成分」ではなく「出どころで差がつく成分」です。 ラベルの前で確認できることは3つあります。
→ Erythroxylum なのか Trichilia なのか。研究があるのは後者です。書けない製品は原料を管理できていない可能性があります。
目② mgが書いてあるか
→ 「配合」の2文字は1mgでも成立します。量が無ければ、他と比べようがありません。
目③ 断定的な効能とセットで売られていないか
→ 人での効果試験がまだ無い成分です。断定して売る姿勢そのものが判断材料になります。
伝統ハーブは、単独より複数を組み合わせた設計で使われるのが普通です。カツアバも例外ではありません。だからこそ「何を、何mg入れたか」を1成分ずつ開示しているかどうかが、比べるための最低条件になります。
見るのは学名・mg・売り方の3つだけ。
この3つが書いてあれば、他の製品と数字で比べられる。比べられない製品は、期待の置きようがない。
よくある質問(FAQ)
カツアバについて、検索でよく並ぶ疑問に短く答えます。判断に必要な部分だけを取り出しました。
いちばん多い疑問は「効くのか」。答えは「人ではまだ分からない」。
分からないから選べない、ではない。学名とmgが書いてあれば、比べて選ぶことはできる。
まとめ
カツアバは「効かないと証明された成分」ではありません。「まだ人で調べられていない成分」です。 この2つは違います。
・研究が積み上がっているのは Trichilia catigua。市販品の実体もこれが多数派。
・勃起:取り出した海綿体が弛緩(Antunes 2001)。人での試験は無い。
・性欲:動物の行動と脳内物質まで。人で測った試験は見当たらない。
・活力:マウスの運動量と握力で差(Martins 2018)。ただし一部の時点のみ。
・精子:傷つけたマウスで異常率低下(Chang 2022)。人の精液所見は未検証。
・選ぶ基準は学名・1日あたりのmg・売り方の3つ。
派手な効能書きより、種と産地と配合量を開示しているか。カツアバに関しては、この一点で選ぶのがいちばん確実です。
4軸のうち3軸に動物の報告があり、人での試験はどの軸にも無い。
それでも比べる方法はある。学名と1日あたりのmgが書かれた製品どうしを並べること。
参考文献
- Antunes E, Gordo WM, de Oliveira JF, Teixeira CE, Hyslop S, De Nucci G. (2001) “The relaxation of isolated rabbit corpus cavernosum by the herbal medicine Catuama and its constituents.” Phytother Res 15(5):416-421. PMID: 11507734 / DOI: 10.1002/ptr.861 — Trichilia catigua 抽出物がウサギ陰茎海綿体を長時間弛緩させた(短い収縮が先行する場合あり)。ガラナが最も強く弛緩させた。
- Kletter C, Glasl-Tazreiter S, Presser A, et al. (2004) “Morphological, chemical and functional analysis of catuaba preparations.” Planta Med 70(10):993-1000. PMID: 15490329 — 市販14製品の分析。半数以上が表示と違う生薬で混和、実体の多数派は Trichilia catigua、50%からトロパンアルカロイド検出、ウサギ海綿体の試験では効果を示さず。
- Campos MM, Fernandes ES, Ferreira J, Santos AR, Calixto JB. (2005) “Antidepressant-like effects of Trichilia catigua (Catuaba) extract: evidence for dopaminergic-mediated mechanisms.” Psychopharmacology 182(1):45-53. DOI: 10.1007/s00213-005-0052-1 — げっ歯類で抗うつ様作用。神経終末でドーパミン・セロトニンの再取り込み抑制と放出増加。
- Viana AF, Maciel IS, Motta EM, et al. (2011) “Antinociceptive Activity of Trichilia catigua Hydroalcoholic Extract: New Evidence on Its Dopaminergic Effects.” Evid Based Complement Alternat Med 2011:120820. PMID: 19815648 / DOI: 10.1093/ecam/nep144 — マウス200 mg/kgで鎮痛作用。主にドーパミン系を介する。
- Martins NO, de Brito IM, Araújo SSO, Negri G, Carlini EA, Mendes FR. (2018) “Antioxidant, anticholinesterase and antifatigue effects of Trichilia catigua (catuaba).” BMC Complement Altern Med 18(1):172. PMID: 29884235 / DOI: 10.1186/s12906-018-2222-9 — マウスでトレッドミル疲労を部分的に軽減。高用量で自発運動量が増加し、握力低下が縮小(一部の観察時点)。
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- dos Santos AH, Ramos AC, Silveira KM, et al. (2015) “The exposure to Trichilia catigua (catuaba) crude extract impairs fertility of adult female rats but does not cause reproductive damage to male offspring.” J Ethnopharmacol 166:86-91. PMID: 25792016 — 妊娠・授乳期のラットに400 mg/kg/日。着床前後の妊娠喪失が増加。母体行動と雄仔の生殖・行動指標に変化なし。
- Oliveira CH, Moraes ME, Moraes MO, Bezerra FA, Abib E, De Nucci G. (2005) “Clinical toxicology study of an herbal medicinal extract of Paullinia cupana, Trichilia catigua, Ptychopetalum olacoides and Zingiber officinale (Catuama) in healthy volunteers.” Phytother Res 19(1):54-57. PMID: 15798997 / DOI: 10.1002/ptr.1484 — 健康成人に25 mLを1日2回・28日間投与。重篤な有害反応や血液・生化学値の変化は報告されず。
- (2023) “The traditional use of native Brazilian plants for male sexual dysfunction: Evidence from ethnomedicinal applications, animal models, and possible mechanisms of action.” J Ethnopharmacol. PMID: 37437795 — ブラジルで性機能の目的に使われる74種を整理。薬理学的に検討された14種に Trichilia catigua が含まれる。想定される機序は抗酸化・アンドロゲン様作用、PDE5阻害、NO増加、ドーパミン系とノルアドレナリン系の活性化。
- Bernardo J, Ferreres F, Gil-Izquierdo Á, et al. (2018) “In vitro multimodal-effect of Trichilia catigua A. Juss. (Meliaceae) bark aqueous extract in CNS targets.” J Ethnopharmacol 211:247-255. PMID: 28970152 / DOI: 10.1016/j.jep.2017.09.039 — 中枢神経系の複数の標的に対する多面的な作用(試験管)。






