- いちばん確かなのはストレスと不安の領域。
- テストステロンが上がった試験はある。ただし幅は穏やか。
- 勃起だけを見た試験では、偽薬と差が出ていない。
- だから選ぶときは1成分ごとの配合量と組み合わせを見る。
「テストステロンが上がる」「ストレスに効く万能ハーブ」。アシュワガンダにはこうした言葉が並びます。ただこの植物は、人を対象にした試験で実際にプラスの結果が出ている領域があります。問題は、その領域と空白の領域が混ぜて語られていること。男性コンディションの4軸(勃起・性欲・活力・精子)ごとに、実在する論文で仕分けします。
アシュワガンダって何?

インドの伝統医学アーユルヴェーダで古くから使われてきた、ナス科の植物です。サプリに使われるのは主に根の部分で、体がストレスに適応するのを助けるとされる「アダプトゲン」の代表格として扱われています。
寄せられる期待は大きく4つ。ストレスをやわらげる、テストステロンを上げる、筋力をつける、妊よう性を高める。マカやノコギリヤシと違い、領域によっては人での陽性データが存在します。
働く場所も押さえておきます。男ラボがよく扱うシトルリンやアルギニンは、血管をゆるめる材料として研究されている成分です。アシュワガンダが研究されているのはそこではなく、ストレスホルモン側です。
ストレス側から入る植物。
血管をゆるめる材料として研究されている成分とは、狙う場所がそもそも違う。
ストレスの研究は何を示した?

不安の点数が下がり、朝のコルチゾール(ストレスホルモン)も下がった。複数の試験をまとめた解析が、そう報告しています。アシュワガンダでいちばん証拠が厚いのは、この領域です。
2024年のメタ分析は複数の試験を統合し、不安の点数と朝のコルチゾールの低下を示しました。確度 高(stress & anxiety meta-analysis・PMID: 39348746)
個別の試験も見ておきます。Salve 2019 は健康な成人60人が対象でした。1日250mgまたは600mgを8週間。プラセボ(見た目は同じで中身が入っていない偽物)とくらべ、ストレスの質問票の点数と朝のコルチゾールが下がったと報告されています。確度 中(Salve J, 2019・PMID: 31517876)
2023年のWitholytin試験は、強いストレスと疲労を訴える成人が対象です。ストレスと疲労の指標が改善したと報告されています。確度 中(PMID: 37740662)
しくみとしては、HPA軸(脳と副腎をつなぐストレス反応の回路)を穏やかに調整する働きが考えられています。慢性的なストレスは男性ホルモンを押し下げる方向に働くからです。ストレスとホルモンの関係はストレスとテストステロンでも扱っています。
不安の点数と朝のコルチゾールが下がった、という報告は厚い。
この植物の本業はここ。ほかの軸の話は、すべてこの先にある。
テストステロンは上がるの?

上がったと報告した試験はあります。ただし対象は限られ、上がり幅も穏やかです。誰が飲んでも上がる、という話ではありません。
代表的な3本を並べます。
| 試験 | 対象 | 用量・期間 | テストステロンの結果 |
|---|---|---|---|
| Wankhede 2015 | 筋トレ中の若年男性57人 | 600mg・8週 | 偽薬より増加が大きかった。 |
| Lopresti 2019 | 40〜70歳の過体重男性 | 8週(入れ替え比較) | 約14.7%増。DHEA-Sは約18%増。 |
| Chauhan 2022 | 性欲が低い成人男性50人 | 600mg・8週 | 17%増。偽薬側は2%増。 |
Wankhede 2015 では、筋力(ベンチプレス・レッグエクステンション)と腕・胸の筋量、体脂肪率でも偽薬より良い変化が報告されています。確度 中(PMID: 26609282)Lopresti 2019 では、コルチゾールとエストラジオールには差が出ていません。確度 中(PMID: 30854916)
14.7%というのは、元が400 ng/dL の人なら460前後になる計算です。検査値としては動いていますが、体感に直結するとは限りません。もともと下がり気味の人ほど、変化が見えやすい種類の数字です。読み方は基準値と検査にまとめています。
上がったという報告は複数あるが、幅は十数%。
下がり気味の人で見えやすい数字。自分の位置は血液検査で分かる。
勃起の研究はどうなってる?

勃起そのものを主役に据えた試験は、ごくわずかです。そして見つかるひとつは、偽薬と差が出ていません。売り文句には出てこない部分なので、正直に書きます。
2011年の試験は、心因性ED(不安や緊張が主な原因のED)の男性95人が対象でした。86人が完了しています。根の粉末を60日間。IIEF(勃起の状態を点数にする国際的な質問票)の改善は、アシュワガンダ群が12.6%、対照群が19.11%。両群のあいだに差はなく、どちらも25%未満の改善にとどまりました。確度 関連(Mamidi P & Thakar AB, 2011・PMID: 22529644)
大事なのは、この試験が何を測ったかです。対象は「不安が主因のED」、期間は60日、使ったのは抽出エキスではなく根の粉末でした。改善は偽薬側のほうが大きい。この設計では、成分の働きを取り出せていません。血流を測った試験でもありません。
同じ軸の周辺には報告もあります。性機能を5つの面から点数化する質問票では改善が出ています(次のセクション)。ただし勃起だけを取り出した結論ではありません。
勃起を直接みた試験は1本で、偽薬と差がついていない。
測ったのは不安が主因のEDへの60日。勃起で選ぶなら、血流側の成分を1成分ごとのmgで見る。
性欲・性生活の研究は?

性欲が低い成人男性を対象にした試験で、性機能の質問票の点数が上がったと報告されています。ただし根拠は50人規模の1本が中心で、まだ厚いとは言えません。
Chauhan 2022 は、性欲の低下を訴える成人男性50人が対象でした。1回300mgを1日2回、合計600mgを8週間。DISF-M(性的な意欲・興奮・行動・オーガズム・認知の5つを点数化する質問票)の合計点が、偽薬より改善したと報告されています。同じ試験でテストステロンは17%増、偽薬側は2%増でした。確度 中(Chauhan S, 2022・PMID: 35873404)
限界もはっきりしています。参加者は50人、施設はひとつ、点数は本人の主観です。追試が要る段階です。
ただ方向は筋が通っています。性欲は睡眠・気分・ストレスと連動して落ちるからです。本業がストレス側なら、性生活の点数が動くのは延長として読めます。原因の全体像は男性の性欲低下の原因で整理しています。
性生活の点数が上がったという報告はある。
ただし50人の1本が中心。気になるなら、まず検査で自分の数字を知るほうが早い。
活力・スタミナの研究は?

疲れにくさや運動能力を測った試験では、プラス方向の報告が複数あります。ただし「何を測ったか」は試験ごとにばらばらで、そこを揃えて読む必要があります。
まず身体面です。Bonilla 2021 は13の試験・615人の健康な成人をまとめました。筋力とパワーで中くらいの差が出ています(効果量 d=0.68)。中くらい、というのは「全員が体感するほどではないが、集団で見れば確かに動いている」という意味です。確度 高(PMC8006238)
次に睡眠です。Cheah 2021 は5つの試験・400人をまとめました。睡眠の指標は、小さいながら確かな差が出ています(SMD −0.59)。差がはっきりしたのは、1日600mg以上、8週間以上、そして不眠と診断された人たちでした。確度 高(PMID: 34559859)
日中の元気についても報告があります。Lopresti 2019 では、40〜70歳の過体重男性で活力の自己評価が改善しました。Witholytin 試験でも疲労の指標が動いています。ただしどちらも質問票で、競技成績や作業量を測ったわけではありません。背景は中年男性の活力低下ガイド、睡眠は男の睡眠の質を上げるにまとめています。
筋力と睡眠には、小さいが確かな差の報告がある。
測っているのは競技成績ではなく質問票と筋力。選ぶときは1日あたりのmgと期間を見る。
精子・妊活の研究は?

もともと精子が少ない男性を対象にした試験では、はっきりした改善が報告されています。ただしこれは「健康な人の精子が増える」という話ではありません。
Ambiye 2013 は、乏精子症(精子が1mLあたり2000万未満)の男性46人が対象でした。21人が1日675mgを90日間、25人が偽薬です。開始前と90日後の変化は次のとおりです。確度 関連(PMID: 24371462)
| 指標 | 開始前 | 90日後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 精子数 | 959万/mL | 2561万/mL | 約+167%。 |
| 射精した精液の量 | 1.74mL | 2.76mL | 約+53%。 |
| 運動率 | 18.62% | 29.19% | 約+57%。 |
偽薬側の変化はわずかでした。ただし参加者は46人で、1施設のパイロット試験です。
まとめた解析もあります。Durg 2018 は4つの試験を統合し、精子濃度で+13.57百万/mL、運動率で+8.50%という差を出しました。確度 高(PMID: 30466985)ここには弱点があります。統合された試験の多くが「飲む前と飲んだ後」の比較で、偽薬と比べた設計は1本だけでした。前後比較は、季節や生活の変化まで拾ってしまいます。
背景として挙げられているのが酸化ストレス(体がサビつくような状態)です。Mahdi 2009 では、ストレスに関連した男性不妊に根の粉末5g/日を3か月使い、精子数と運動率、テストステロンの改善が報告されています。確度 関連(PMID: 19789214)見るべき項目は精子の質を上げるで整理しています。
精子が少ない人では、はっきりした改善報告がある。
健康な人のデータではない。妊活なら、まず精液検査で今の数字を取るのが先。
安全に飲むための注意点は?

多くの試験で、よく耐えられていると報告されています。ただし甲状腺や自己免疫の病気、妊娠中、服薬中の人には具体的な注意点があります。まれですが、肝障害の報告もあります。
肝障害については症例をまとめた報告があります。アイスランドの3例と米国のDILINの2例、あわせて5例です。平均43歳、飲み始めから2〜12週で黄疸・吐き気・だるさ・かゆみが出ました。肝不全に至った人はおらず、4例は1〜5か月で肝機能が戻っています。確度 参考(Björnsson HK, 2020・PMID: 31991029)まれではありますが、体調の変化を無視しない理由にはなります。
- 甲状腺の病気・治療中の人:甲状腺ホルモンを上げる方向に働く可能性が指摘されています。
- 自己免疫疾患のある人:免疫を刺激する可能性が議論されています。
- 妊娠中・授乳中の人:安全性が確立しておらず、一般に推奨されません。
- 鎮静薬・睡眠薬・血糖降下薬を飲んでいる人:作用が重なる可能性があります。
- 強いだるさ・黄疸が出たとき:いったん中止して受診してください。
よく耐えられているが、当てはまる人には具体的な注意がある。
甲状腺・自己免疫・妊娠中・服薬中は、飲む前に相談。だるさや黄疸が出たら受診。
まとめ
強いのはストレスと不安、次が活力・筋力・睡眠。精子はもともと少ない人での報告があり、性欲は1本の小さな試験。勃起だけは、差が出ていません。
読み方としては、ホルモンを直接押し上げる成分ではなく、下がる原因をゆるめる側の成分として置くのが実態に近いはずです。そして軸ごとに、見るべき成分は変わります。勃起や血流が主題なら、血流側の成分が1日あたり何mg入っているかを見る。妊活なら、まず精液検査で今の数字を取る。強い不安や不眠が続くなら、医療機関が先です。
どの軸でも共通して使えるのは、成分名の数ではなく1成分ごとのmgが開示されているかという視点です。ラベルの読み方はサプリのラベルの見方、ほかのハーブはマカとノコギリヤシもどうぞ。
強いのはストレス。勃起だけは差が出ていない。
軸ごとに見るべき成分は変わる。共通するのは、1成分ごとのmgが開示されているかどうか。
よくある質問(FAQ)
質問の答えは、ほぼ「どの軸か」で決まる。
ストレスなら報告は厚い。勃起なら血流側の成分のmgを見るほうが早い。
1. Salve J, et al. An investigation into the stress-relieving and pharmacological actions of an ashwagandha (Withania somnifera) extract: a randomized, double-blind, placebo-controlled study. Cureus. 2019. [PMID: 31517876](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31517876/)
2. Effects of Ashwagandha (Withania somnifera) on stress and anxiety: a systematic review and meta-analysis. 2024. [PMID: 39348746](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39348746/)
3. Wankhede S, et al. Examining the effect of Withania somnifera supplementation on muscle strength and recovery: a randomized controlled trial. J Int Soc Sports Nutr. 2015. [PMID: 26609282](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26609282/)
4. Lopresti AL, et al. A randomized, double-blind, placebo-controlled, crossover study examining the hormonal and vitality effects of ashwagandha in aging, overweight males. Am J Mens Health. 2019. [PMID: 30854916](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30854916/)
5. Ambiye VR, et al. Clinical evaluation of the spermatogenic activity of the root extract of ashwagandha in oligospermic males: a pilot study. Evid Based Complement Alternat Med. 2013. [PMID: 24371462](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24371462/)
6. Exploring the efficacy and safety of a novel standardized ashwagandha root extract (Witholytin) in adults experiencing high stress and fatigue: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. 2023. [PMID: 37740662](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37740662/)
7. Bonilla DA, et al. Effects of Ashwagandha (Withania somnifera) on physical performance: systematic review and Bayesian meta-analysis. J Funct Morphol Kinesiol. 2021. [PMC8006238](https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8006238/)
8. Mamidi P, Thakar AB. Efficacy of Ashwagandha (Withania somnifera Dunal. Linn.) in the management of psychogenic erectile dysfunction. Ayu. 2011;32(3):322-328. [PMID: 22529644](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22529644/)
9. Chauhan S, et al. Effect of standardized root extract of ashwagandha (Withania somnifera) on well-being and sexual performance in adult males: a randomized controlled trial. Health Sci Rep. 2022. [PMID: 35873404](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35873404/)
10. Durg S, et al. Withania somnifera (Indian ginseng) in male infertility: an evidence-based systematic review and meta-analysis. Phytomedicine. 2018;50:247-256. [PMID: 30466985](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30466985/)
11. Cheah KL, et al. Effect of Ashwagandha (Withania somnifera) extract on sleep: a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2021;16(9):e0257843. [PMID: 34559859](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34559859/)
12. Mahdi AA, et al. Withania somnifera improves semen quality in stress-related male fertility. Evid Based Complement Alternat Med. 2009. [PMID: 19789214](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19789214/)
13. Björnsson HK, et al. Ashwagandha-induced liver injury: a case series from Iceland and the US Drug-Induced Liver Injury Network. Liver Int. 2020;40(4):825-829. [PMID: 31991029](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31991029/)
※本記事は一般的な健康情報であり、特定商品の効能・効果を標榜するものではありません。






