マカはテストステロンを上げる?男性機能への効果を論文で検証【2026年最新】
「マカ=男性の活力ブースター」——サプリ広告の定番ですが、論文を読むと”看板と中身”がかなりズレています。 何が本当で、何が盛られているのか。証拠の強さつきで、正直に整理します。まず30秒で。
マカとは?”ペルーの根菜”が万能扱いされるまで
マカ(Lepidium meyenii)は、ペルーのアンデス高地で育つアブラナ科の根菜です。現地では古くから食材・滋養目的で使われ、近年は「男性の活力」「精力」「テストステロンブースター」として世界中でサプリ化されています。
しかし——その看板の多くは、臨床データより”期待”が先行しています。まず、いちばん誤解の多い「テストステロン」から、事実を確認しましょう。
① マカの効き方は「テストステロン経由ではない」
マカの最大の誤解が「飲めばテストステロンが上がる」。しかしヒトのRCTでは、否定的です。
健常な成人男性を対象にした試験で、マカを1日1,500mgまたは3,000mg、8週間摂取しても、血中のテストステロン・LH(黄体形成ホルモン)・エストラジオールなどの男性ホルモン値は、プラセボと変わりませんでした 確度 中(Gonzales et al., 2003)。
さらに、試験管レベルでも裏づけがあります。マカの抽出物は、ヒトのアンドロゲン受容体に結合せず、男性ホルモン様の遺伝子応答を起こさなかったと報告されています 確度 低〜中(基礎)(Bogani et al., 2006)。つまりマカは、テストステロンを直接増やすタイプの成分ではありません——これが誠実な現在地です。だからこそ大事なのは、「T値が上がるか」ではなく、マカ本来の使われ方(性欲・活力・妊活)で何が報告されているかを見ること。次章から、その”実際の良い報告”を見ていきます。
② 性欲・性機能:RCTで「改善の報告」がある
ここが、マカの本領です。ホルモンは動かさない一方で、性欲(sexual desire)については、ランダム化比較試験で改善が報告されています。
ペルーの研究チームが健常男性を対象に行った12週間の二重盲検RCTでは、マカ(1,500mgまたは3,000mg/日)を8週間続けた時点から、自己申告の性欲が有意に改善したと報告されています 確度 中(RCT)(Gonzales et al., 2002)。しかもこの効果はテストステロン・エストラジオールの変化とは無関係で、うつや不安スコアの変化でも説明されませんでした。つまりマカは、ホルモンを介さない独自の経路で性欲に働きかける可能性がある——これは”限界”ではなく、この成分の個性です。
近年では、加齢に伴う男性の不調(遅発性性腺機能低下=LOH)の症状を対象にした二重盲検・プラセボ対照RCTも行われ、症状スコアの改善が報告されています 確度 中(RCT)(2023年のLOH試験)。
系統的レビューは「性機能改善を示すRCTはあるが試験数がまだ限られる」と慎重に整理していますが 確度 関連(SR)(Shin et al., 2010)、方向性としては”改善の報告が積み上がってきている”成分だといえます。テストステロンという物差しでは測れない良さがある、というのがマカの正しい理解です。
1.5〜3g/日
変化なし
まだ解明途上
RCTで改善報告
この「ホルモンを介さない」という性質は、実は使う側にとって分かりやすい利点でもあります。テストステロンを外から動かす介入は、体のフィードバック機構やホルモンバランスへの配慮が必要になりますが、マカはそこに手を突っ込まずに性欲・活力の文脈で使われてきた、という点で、伝統的に受け入れられてきた背景とも整合します。
③ 精子・妊活——”報告はある”が確立ではない
男性の妊活文脈でもマカは人気です。
小規模な二重盲検試験や、複数試験をまとめた解析で、精液の量や精子の指標が改善したとの報告があります 確度 低〜中(Melnikovova et al., 2015/精液指標のメタ分析, 2022)。ただし、いずれも規模が小さい・研究の質にばらつきがあるため、「マカで妊活が確実に改善する」と言い切れる段階ではありません。ここでもホルモンは介していない点は共通しています。
④ エネルギー・気分:伝統的な使われ方と、これからの研究
「飲むと元気が出る」という声も多いマカ。疲労感や気分に関する報告もありますが、男性ホルモンや性機能ほど検討されておらず、根拠は弱めです 参考。プラセボ効果や、栄養(マカは炭水化物・ミネラルを含む食品)としての側面も切り分けが難しいのが実際です。「効く人もいるかもしれないが、過度な期待は禁物」という距離感が妥当です。
⑤ 種類・品質・注意点——”自然由来”を過信しない
- 赤・黒・黄マカなど種類で成分プロファイルが異なり、研究で使われたものと市販品が同じとは限りません。配合量・規格が明記された製品を選ぶのが無難です。
- 妊娠・授乳中は避ける(安全性データが不十分)。
- 甲状腺の病気がある人は注意(アブラナ科にはゴイトロゲンを含むものがある)。持病・服薬中の人は事前に医師へ相談を。
- まれに消化器症状などが出ることがあります。合わなければ中止を。
「ハーブ・自然食品だから無条件に安全」ではありません。持病・妊娠授乳・服薬があるなら、まず相談が鉄則です。
マカは「テストステロンを数値で上げる成分」という物差しで見ると評価を誤ります。ホルモンを介さずに性欲・活力へ働きかける可能性がある、伝統に裏打ちされた根菜——そう理解して、一定期間じっくり試すのが正しい付き合い方です。
よくある質問(FAQ)
マカを飲めばテストステロンは上がりますか?
いいえ。健常男性のRCTでマカはテストステロン・LHを変化させず、試験管でもアンドロゲン受容体に結合しないと報告されています。「T爆上げ」は科学的根拠に乏しい表現です。
マカは性欲・性機能に効きますか?
小規模RCTで性欲改善の限定的な報告はありますが、系統的レビューは「試験数が少なく質にばらつき、確たる結論には不十分」と評価しています。過度な期待は禁物です。
マカとアシュワガンダ、どっちがいい?
目的によります。どちらも「テストステロンを直接ドカンと上げる」ものではありません。ストレス・コルチゾール低下ならアシュワガンダの報告が比較的しっかりしています(別記事参照)。
マカは妊活(精子)に良いですか?
精液指標の改善を示す小規模な報告はありますが、確立とは言えません。妊活は原因が多岐にわたるため、自己判断でサプリに頼らず、まず医療機関での相談が基本です。
副作用や飲み合わせは?
一般に食経験のある食品ですが、妊娠授乳中は避け、甲状腺疾患・持病・服薬中の方は医師に相談してください。種類・品質の差も大きいので規格の明確な製品を。
まとめ
- テストステロンは上がらない:健常男性のRCTでホルモン不変、試験管でもアンドロゲン受容体に結合せず(マカ神話の核心をここで否定)。
- 性機能・性欲は限定的な報告:小規模RCTはあるが、系統的レビューは「質・数が不十分」と評価。効くとしてもホルモン経由ではない。
- 精子は報告ありだが確立ではない。エネルギー・気分は根拠が弱め。
- 種類・品質差に注意、妊娠授乳・持病・服薬は医師相談。「自然由来=安全」ではない。
関連:テストステロンを上げる方法(土台は生活習慣)/ アシュワガンダはテストステロンを上げる?
参考文献
- Gonzales GF, et al. (2003) “Effect of Lepidium meyenii (Maca), a root with aphrodisiac and fertility-enhancing properties, on serum reproductive hormone levels in adult healthy men.” J Endocrinol 176(1):163-168. PMID: 12525260 — マカ1500/3000mg×8週で血中テストステロン・LH等に有意な変化なし。
- Bogani P, et al. (2006) “Lepidium meyenii (Maca) does not exert direct androgenic activities.” J Ethnopharmacol 104(3):415-417. PMID: 16239088 — マカ抽出物はヒトアンドロゲン受容体に結合せず、男性ホルモン様の転写活性を示さない。
- Shin BC, et al. (2010) “Maca (L. meyenii) for improving sexual function: a systematic review.” BMC Complement Altern Med 10:44. PMID: 20691074 — 性機能改善を示す小規模RCTはあるが、試験数・質が不十分で結論は限定的。
- Melnikovova I, et al. (2015) “Effect of Lepidium meyenii Walp. on Semen Parameters and Serum Hormone Levels in Healthy Adult Men: A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Pilot Study.” Evid Based Complement Alternat Med 2015:324369. DOI: 10.1155/2015/324369 — 精液量・精子運動率の改善傾向、ホルモン値は不変。
- Wang S, et al. (2022) “Maca (Lepidium meyenii Walp.) on semen quality parameters: A systematic review and meta-analysis.” PMID: 36110519 — 精液指標に関する報告を統合した系統的レビュー/メタ分析(原著の質に注意)。
- Gonzales GF, et al. (2002) “Effect of Lepidium meyenii (MACA) on sexual desire and its absent relationship with serum testosterone levels in adult healthy men.” Andrologia 34(6):367-372. PMID: 12472620 — 12週RCT。8週目から性欲が有意に改善、テストステロン・エストラジオールとは無関係。
- (2023) “Efficacy and Safety of Maca (Lepidium meyenii) in Patients with Symptoms of Late-Onset Hypogonadism: RCT.” World J Mens Health. DOI: 10.5534/wjmh.220112 — LOH症状に対する二重盲検RCTで改善を報告。
- Gonzales GF. (2012) “Ethnobiology and Ethnopharmacology of Lepidium meyenii (Maca), a Plant from the Peruvian Highlands.” Evid Based Complement Alternat Med 2012:193496. DOI: 10.1155/2012/193496 — マカの民族薬理・臨床研究の総説。


